約 1,885,902 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8172.html
前ページ次ページ機械仕掛けの使い魔 機械仕掛けの使い魔 第8話 決闘から2日後の虚無の曜日。この日はいわゆる”日曜日”であり、学院も休みである。生徒たちはみな、思い思いの方法で休日を謳歌していた。 学院南側、アウストリの広場の一角で、クロは丸くなって昼寝をしていた。縁側の板張りもいいが、手入れの行き届いた芝生もまた、乙な物である。 と、そこに1つ、影が射した。 「クロ、探したわよ。こんな所でお昼寝してたの?」 「…あぁ、ルイズか。ここの芝生も、なかなか悪くねーからな。ちょっと寝させてもらってたわ」 召喚して初めて見た、クロの猫らしい部分に、ルイズは微かに笑った。サイボーグと言っても、根本的な部分は猫と同じのようだ。 「んで、オイラを探してたってのは、どーゆー用だ?」 「今日が虚無の曜日、ってのは知ってる?」 「…きょむのようび? 何だそりゃ?」 「平たく言えば、今日は学院がお休みなのよ。だから、私のショッピングに付き合いなさい!」 「何でオイラまで一緒に行かなきゃなんねーんだ? 1人で行きゃいいだろ…」 全く乗り気ではないクロ。隠そうともせずに欠伸を見せつけるが、ルイズはどこ吹く風だ。 「いいから、付いて来なさい! …アンタも、何か欲しい物があれば、買ってあげるから…」 後半は蚊の鳴くような声だったが、クロの耳は聞き逃さなかった。 ここで、クロは腹から大剣『なんでも斬れる剣(別名:盲腸ソード)』を取り出し、眺めてみた。 「ちょっ! いきなり危ないわね!」 「大丈夫だっての、ちっと考えさせろや」 この『なんでも斬れる剣』、名前の通り恐ろしい切れ味を誇る。 バスだろうが、ミーの改造車だろうが、宇宙人の円盤だろうが、本当に、何でも斬ってみせる代物だ。 だが、数々の修羅場をくぐり抜けてきたこの剣も、過去3度だけ、折れた事がある。 大王デパートでのミーとの一騎打ち。桜小学校裏山地下の迷宮。デビル化したミーとの戦闘。 基本的には前述のようにあらゆる物を斬り裂いたり、ガトリング砲の弾丸を弾いたりと、耐久性にも眼を見張るものがあるが、ちょこちょこ折れているのだ。 先の3例は全てミーの剣だったが、クロの剣も、何かの拍子で折れないとも限らない。 「ふーむ…」 「決闘の時から思ってたけど、その剣だの銃だの、お腹のどこにしまってあるのよ…」 「知らねー」「は?」 クロからの意外な返答に、ルイズは呆気に取られた。 「…じゃあ、そのお腹は、自分でもよく解んないのに使ってたの?」 「使えりゃ何でもいいじゃねーか。別に困る事もねーし」 ちなみに、なんでも斬れる剣は、盲腸の辺りに収納されている。これが、盲腸ソードとも呼ばれる由縁だったりする。 なんでも斬れる剣を収め、クロはその場に立ち上がった。 「よっしゃ、オイラも付いて行ってやる。どこまで行くんだ?」 「王都トリスタニアよ。厩で馬を借りて行かなきゃ、2日はかかるわね」 「馬だぁ? 馬でどんくらいかかるんだよ?」 「そうね…ざっと2時間ってところかしら」 再びクロは思案する。往復で4時間。一般的な移動手段が馬しかないとはいえ、さすがにかかり過ぎである。 と言うか、クロの身体では、馬に乗る事など不可能だ。 「ルイズ、馬はナシだ。適当な荷車探して来な」「荷車ぁ?」 本塔へ向かいながら、クロが言った。 「荷車なんて何に使うのよ。って言うか、アンタどこに行くのよ!」 「馬じゃ埒が明かねぇから、オイラが馬代わりになってやる。オイラは、食料の調達だ」 「馬代わりって…まぁ、解ったわ。じゃあ、準備が終わったら校門で落ち合いましょう」 まるで意味不明な言い分だが、クロの馬鹿力を考えると、あながち不可能な事ではないように思える。 ルイズは素直に、クロの言う通り、適当な荷車を探しに行った。 + + + + + + クロが向かった先は、厨房だった。入り口から見る限りでは、誰もいない。 「おーい、誰かいねーか?」 「おぉ、誰かと思ったら『我らの黒猫』じゃねぇか!」 クロの問いかけに答えたのは、コック長のマルトーだった。昼食の仕込みが終わり、厨房の奥で一休みしていたようだ。続いて、シエスタも顔を見せる。 「どうなさったんですか、クロちゃん?」 「いや、これからトリスタニアとか言う場所に行く事になってよ。移動中に燃料切れたら洒落になんねーから、油分けてくんねーかな、って」 「トリスタニアだぁ? ここから馬でも2時間はかかるぞ。何でまたそんな場所に行こうってんだ?」 マルトーの疑問に、クロは肩を竦めてみせた。 「ルイズの付き添いでね。いやはや」 「かーっ、せっかくの休みの日にまでご主人様に尽くすたぁ、使い魔の鑑ってヤツだ!」 なぜか嬉しそうなマルトー。 決闘騒ぎの後、クロはマルトーを始めとした厨房のスタッフに、『我らの黒猫』と呼ばれ、大いに気に入られた。何でも、傲慢な貴族に一泡吹かせてくれたから、だとか。 その日の夕飯は非常に豪華な料理が振舞われたが、同時にスタッフたちの、貴族に対する愚痴も延々と聞かされ、さらにこの上なく持ち上げられた為、クロとしては複雑な夕食になっていた。 どうやら奉公している身としても、貴族に対しては色々と思うところがあったらしい。 「シエスタ! 適当なビンに油詰めて持たせてやんな!」「はいっ!」 威勢のいいやり取りから程なく、クロの前に5本の料理用油入りビンが並べられた。1本当り、2リットルは入っていそうだ。 「わりーな、助かるわ」 ビン5本を腹に収納したクロは、マルトーとシエスタに軽く挨拶すると、立ち去ろうとした。そこで、マルトーから提案が出る。 「そうだ、シエスタ。お前も一緒に行ってやったらどうだ?」 「私も…ですか? でも、お昼のお給仕が…」 「休憩に行ってる連中が戻れば、お前一人分の穴くらい、埋めれるさ。ミス・ヴァリエール1人じゃ、買い物1つとっても難儀しそうだしよ」 貴族の箱入り娘として育ったルイズと、日頃から商魂逞しく育った商人では、商売におけるアドバンテージは、どう足掻いても商人側に偏るだろう。 そうなれば、つまらない商品に大枚をはたいてしまうという事態に発展しかねない。 基本的には貴族に好意的な感情を抱いていないマルトーだが、クロの決闘騒ぎから、その主であるルイズに対しては、少々見方を変えたようだ。 クロとしても、日頃のルイズの様子を鑑みると、シエスタの同行は願ってもない話だった。 クロに対しては互いを認めたという事もあり、さほど無茶な事は言わないのだが、変わって相手が同級生――特にキュルケ辺りとなると、途端に素が顔を出す。 一歩間違えればリアルファイトに発展しかねない舌戦が展開され、ルイズとキュルケが顔を突き合わす度、クロは毎度うんざりとしていたのだ。 仮に買い物中に素が出れば、買い物どころではなくなる可能性もある。そうなれば、クロの目的も達成されないかも知れない。 「シエスタ、オメーも一緒に来てくんねーか?」 「解りました、私でよろしければ喜んで!」 マルトーの許可とクロの頼み。こうなれば、シエスタに断る理由はない。シエスタは先行するクロに従い、厨房を後にした。 校門に到着すると、ルイズはもたれかかっていた荷車から離れ、クロに詰め寄った。 「遅いわよっ! いつまで待たせる気!?」 「そんなに経ってねーだろ…」 途端に怒り出すルイズに呆れながらも、クロは荷車を眺めた。3~4人程度なら余裕で乗れそうな大きさだ。作りもなかなか頑丈そうで、悪くない。 「それに、何でシエスタもいるの?」 「えっと、それはですね…」 「オメーとオイラだけじゃ心配だからな。一緒に来てもらうんだよ」 いざ言おうとすると、その理由ゆえに口ごもるシエスタだったが、クロが何でもない事のように後を継いだ。 「ど、どどどどういう意味よ!?」 まるで自分が買い物も出来ないような言い草に激昂するルイズだったが、クロが制する。 「ボッタくられねー自信あんのか? 町人の態度にキレねー自信あんのか?」 「う…そ、それは…」 ルイズは思い返す。今まで、自分1人で買い物に行った事など、あっただろうか。いや、ない。大体は両親や長姉と一緒だった。 個人の買い物も、屋敷の使用人を引き連れていた。その時、みんなはどうしていた? 両親や長姉なら、その振る舞いから商人たちも畏まっていたが、使用人たちは、いつも商人と交渉し、値切るのが基本だった。 それが、自分に出来るのか? 正直に言えば、自信はなかった。足元を見られて、安い買い物に大金を注ぎ込まされるのがオチだろう。 ヴァリエール家の娘として、そんな恥のかき方は、したくなかった。 「解ったわよ…シエスタ、よろしくね」 「はいっ、お任せ下さい!」 張り切るシエスタ。恐らく平民として、値切り交渉は生きる為の処世術だったのだろう。その目は、これから始まる『平民の戦争』に燃えていた。 話も付いたところで、ルイズとシエスタは荷車に乗り込んだ。無論、座席などない荷物運び用の代物なので、荷台に直接腰掛けている。 「んじゃ、しっかり掴まってろよ。全力で飛ばすからなー」 軽く足をほぐしながら、クロが荷車から突き出ている取っ手を握った。 「ホントに馬より速いんでしょうね?」 「あれ、馬じゃなくてクロちゃんが引くんですか?」 疑うルイズと、状況が飲み込めないシエスタ。そんな2人を尻目に、クロは軽く地面を蹴った。ほんの少しの砂埃が舞い、地面が数ミリ削れる。準備は整った。 「それじゃ…行くぜェッ!!」 「馬よりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」 「重くぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」 ルイズとシエスタの台詞は、悲鳴に取って変わった。ギーシュとの決闘の時同様、1歩目からクロがトップスピードで走り始めたからだ。 クロの叩き出す最高速度は、時速156km。馬と比較すれば、優にその倍に匹敵する。女性2人を乗せた荷車を引いていても、その速度は色褪せず、風竜には及ばないものの、地上を走る生物としては、破格のスピードである。 「す…凄いわクロ! そこらの足自慢の使い魔よりよっぽど速いじゃない!」 「景色が凄い勢いで流れて行きます!」 「喋ってっと舌噛むぞ!」 凄まじい規模の砂煙を巻き上げながら、クロに引かれる荷車は、一路王都トリスタニアへ爆走するのだった。 + + + + + + 一方、学園にいたキュルケは、暇を持て余していた。親友のタバサは、いつも通り自室で読書に勤しんでいるのだろう。それを、暇だからという理由で邪魔するほど、野暮ではない。 ついでだが、以前同じ理由でタバサの部屋に乱入した際、即座にコモンマジック『サイレント』で、完全にシカトを決め込まれた経験があった事も追記しておこう。 昼食を済ませ、とりあえず自室に戻ろうとしたキュルケだったが、隣の部屋、すなわちルイズの部屋の様子がおかしい事に気づいた。何やら、声がする。 それだけなら、特に気にする事でもないのだが、明らかにその声は、ルイズやクロのものではない。 扉越しではよく聞こえないが、男性の声のようだ。しかも、聞き覚えのない声である。好奇心に駆られ、ドアを開けようとするが、ドアには鍵がかかっている。 「ヴァリエールー、いるの?」 試しにノックしてみるが、返事はない。漏れ出る声にも、特に変化は感じられない。ノックとノブを捻る動作の順番が逆に思えるが、気にしてはいけない。 「仕方ないわね…誰か男でも待たせてるのかしら?」 キュルケは胸の谷間から杖を取り出すと、扉にコモンマジック『アンロック』をかけ、鍵を開けた。やはり反応はない。 「お邪魔するわよ、ヴァリエール」 ルイズもとうとう、男を誘惑するようになったのか、と密かにその豊満な胸を踊らせつつ、キュルケはルイズの部屋に侵入した。 部屋に入ると、先程の声が鮮明に聞こえた。だが、ここでキュルケは奇妙な点に気付く。 部屋には、誰もいないのだ。一通り部屋の中を見てまわるが、人の影はない。 「どうなってるのよ、これ…」 ここで、キュルケは、聞こえてくる声に耳を澄ませてみた。 『お~い…クロ~…。そこにおらんのか~…』 姿を見せない声の主は、クロを探しているらしい。キュルケは耳に手をやり、声の発生元を探す。 部屋の中を探索し、キュルケは行き当たった。それは、ルイズが普段使っていると思われる、鏡台。その鏡から、声は聞こえるのだ。 「鏡が…喋ってる?」 『おぉ…そこに誰かおるのか…?』 声のターゲットが、キュルケに向いた。明らかに、今のキュルケの言葉に反応していた。力ない口調が、異様に不気味さを掻き立てている。 「あ…あなた誰よ…」 自然と震える声でキュルケが尋ねるが、声はそれに答えない。 『クロはどこじゃ~…。そこにおらんのか~…』 何度もその言葉のみを繰り返す。キュルケの褐色の肌に、一斉に鳥肌が立った。これは、もしかして…。 「たっ、たたったたたたタバサーーーーーーーー!!!!」 脇目もふらず、キュルケは部屋から飛び出した。今までに遭遇した事のない怪奇現象に、キュルケの理性が吹っ飛んでしまったのだ。 全力で走り、階段を駆け上がり、上のフロアのタバサの部屋に飛び込んだ。 「たたタバサッ! ????ヴァリエールの部屋がっ!!」 突然の闖入者に驚く風でもなく、タバサは杖を取った。 「『サイレント』はちょっと待って! ヴァリエールの部屋が大変な事になってるの!」 ただならぬ様子のキュルケに、タバサはひとまず杖を置いた。それでも、本からは目を離さない。徹底していた。 「彼女の部屋が、どうしたの?」 「いい、タバサ、落ち着いて、聞いてね?」 自分も落ち着こうと、一言ずつ話す。タバサは第六感で嫌な予感を覚えつつも、次の言葉を無言で促した。 「ヴァリエールの部屋に、幽霊が」「……」 その瞬間タバサは、キュルケも見た事のないほどの俊敏さで杖を取ろうとした。 しかし、明らかにガタガタと震えていた手では、杖を掴むのもままならず、ひたすら杖の表面を、指が滑るのみであった。 「確認なんて頼むつもりはないから! 『サイレント』はやめてタバサ!」 慌ててタバサに抱きつくキュルケ。そこでようやく、タバサの震えが止まった。さすがのキュルケも、親友を追い詰めるような真似はしたくないのだ。 「詳しくは話さないわ、あなたが怖がっちゃうから」 「…内緒」「解ってるわよ」 幽霊や妖怪など、オカルトな類は、タバサが最も嫌う分野だった。そういった弱点を、タバサはある理由から、極力他人には知られないように努めていた。 先日の様子から、ルイズとシエスタには知られてしまったかも知れないが、タバサ公認でこの事実を知っているのは、現在ではキュルケのみだ。無論、キュルケもそれを知ってからかったり、周囲に吹聴するような愚かな人物ではない。 「それで、どうするの?」 「私たちじゃ、どうしようもないわ。とにかく、部屋の住人のヴァリエールに知らせた方がいいんじゃないかしら」 唇に人差し指を当て、今後の方策を思案するキュルケ。だが、当の本人であるルイズは、とっくにクロの引っ張る荷車でトリスタニアに出発している。 キュルケも、食堂でルイズの姿を見かけなかった為、行き先は解らないまでも、学院の外に出ている、と当たりを付けた。 無言のまま、タバサは窓に目をやった。いつの間にか彼女の使い魔、風竜の『シルフィード』が、悠々と翼を広げ、高度を維持したまま部屋の様子を伺っていた。 「学院の外、桃色の髪の生徒と黒猫」 シルフィードに告げ、軽やかにその背に乗る。キュルケも後に続いた。 2人が背に乗ったのを確認すると、シルフィードは大きく羽ばたいて学院の上空まで上昇、そして周囲に目を走らせ、すぐさまある方向――王都トリスタニアへ向け、風を切って飛翔した。 + + + + + + キュルケとタバサがトリスタニアへ飛び立ったその10分後。学院前に、1台の馬車が止まった。 「随分と久しぶりね、ここに来るのも」 馬車から出てきたのは、長身で金髪、逆三角形の眼鏡をかけた美女。古巣を懐かしむような言動だったが、そこに郷愁の念は感じられない。 彼女がこの学院に来たのは、ある噂を耳にしたからである。 曰く、『喋る猫がいる』 曰く、『その猫は2本足で立って、歩いた』 曰く、『その猫は大きな剣と見慣れない銃を使った』 曰く、『その猫はドットメイジを圧倒した』 最初の噂だけならば、彼女も特に気にする事はなかっただろう。メイジと契約を結んだ猫が喋った、という事例なら、過去にいくらでもある。珍しい事ではない。 続く3つの噂も、聞き流してもいい部類だろう。噂の出所は、貴族とはいえ子供が集まる魔法学院。 常に目新しい話題を求められる環境において、大げさな尾ひれはひれが付くのも、納得は出来る。 だが、最後に耳に入った噂話が、彼女を突き動かすに至った。 曰く、『その猫はヴァリエール公爵家の息女が召喚した』 これにはさすがの彼女も驚きを隠せず、即座に部下に、噂の真偽を確かめるべく指示を出した。 そして、それらの噂話が、極めて信憑性が高いと報告を受けるやいなや、上司へ出張の旨だけを伝え、やって来た、というワケである。 「あのちびルイズったら…一体何を喚び出したというのよ…?」 ヴァリエール家の息女をして、『ちびルイズ』と呼ぶその女性こそ、ヴァリエール公爵家の長女、『エレオノール・アルベルティーヌ・ル・ブラン・ド・ラ・ブロワ・ド・ラ・ヴァリエール』その人であった。 …余談ではあるが、エレオノールの乗った馬車は、学院に向かう道すがら、凄まじい規模の砂煙に巻き込まれたのだが、それを引き起こしたのが、件の猫、すなわちクロである事は、今のエレオノールには、知る由もなかった。 本塔最上階、学院長室で、オールド・オスマンとエレオノールが向かい合っている。エレオノールは噂の真相を確かめるに当たり、まず学院長に話を聞こうとしたのだ。 「誰かと思えばミス・ヴァリエールの姉かい。久しいの」 「えぇ、お久しゅうございますわ、オールド・オスマン」 「お主がこの学院を卒業したのは、何年前だったかのぅ…」 目を細くし、記憶を掘り起こそうとするオールド・オスマンを、エレオノールが遮った。 「残念ですが、今日は思い出話に華を咲かせるために来たのではありませんの」 にわかに、オールド・オスマンの表情が鋭くなった。 「『アカデミー』の仕事じゃな?」 「ご明察。さすがはオールド・オスマン。まだ衰えていませんのね」 「ふん、何とでも言うがよかろう」 拗ねたような顔をするオールド・オスマンだが、内心では激しく舌打ちした。 何の要件もなく、アカデミーの人間が、わざわざ学院まで来る理由などない。となれば、予想されるその要件とは、1つ。ルイズが召喚した、クロの件に他ならない。 まさかガンダールヴのルーンまで知られている事はないだろうが、まかり間違ってクロがアカデミーに連れて行かれでもすれば、後は芋づる式だ。人の口に戸は立てられぬ、と言うが、いくらなんでも噂の伝達速度が速すぎた。 しかし、1つ気がかりが。アカデミーほどの研究機関が、調査対象の身内を送り込むだろうか。場合によっては、妹の使い魔をバラバラに解剖する事態にまで発展するような案件に、実の姉を派遣などするだろうか。 効率を考えれば、そんな馬鹿な真似はしないはずだ。魔法学院の卒業生、という肩書きで抜擢されたにしても、エレオノール以外にも、魔法学院の卒業生はいくらでもいる。 「それで、アカデミーの人間として、学院くんだりまで来た要件は何じゃ?」 あえて知らぬ振りをするオールド・オスマン。理由など解り切ってはいるが、こちらから手札を見せるような真似はしない方がいいだろう。 「あら、あなたほどの人物が知らない、などとは言わせませんわ。…ルイズの召喚した、黒猫。ご存知ではありませんの?」 小馬鹿にするような表情のエレオノール。会話のアドバンテージを取ったと思っているのだろうが、そのままの立場を享受するほど、オールド・オスマンも耄碌はしていない。 「おやおや、アカデミーも随分と暇なのじゃな。たかが学院生1人の使い魔を調べさせる為だけに、貴重な研究員を派遣するとはの」 まずはほんの小手調べ。出方を伺う。エレオノールはピクリ、と目尻を釣り上げた。 「確かに、ミス・ヴァリエールの召喚した使い魔が何なのかは、わしの所にも報告が来ておるよ。お主の言う通り、黒猫じゃな」 「えぇ、その黒猫を問題としているのですよ、我々としては」 「じゃが、どこにでもいそうな黒猫じゃと聞いておる。なにゆえアカデミーが動くのか、わしには解らんのぅ」 髭をさすりながら、呑気そうに横目で問う。エレオノールは少し苛立を憶えたようで、早口でまくし立てた。 「そうではないから動いているのです。喋り、2本足で立ち、武器を使い、ドットメイジを圧倒する黒猫など、聞いた事がありますか!?」 オールド・オスマンは心中ほくそ笑んだ。どうやら、ガンダールヴの事は知られていないらしい。これなら、会話の主導権も握りやすいというもの。 さらに畳み掛けようと、気だるげに聞いた。 「馬鹿げた話じゃのぅ…。まるで平民の作り話のようじゃ。そんな荒唐無稽な話を信用するほど、アカデミーは暇を持て余しておるのかね?」 引き出しから水ギセルを取り出し、一服。アカデミーそのものを馬鹿にするような態度をとると、エレオノールは臨界突破した。顔を真っ赤にし、握った両拳をプルプルさせる。 (やはりあの頃と変わらんのぅ。妹と同じく、挑発に滅法弱いようじゃな…) そして、トドメの一言を放った。 「アカデミーは、動いとらんのじゃろ?」 「…えぇ、そうですとも! 私の独断ですわ、この一件は!」 「やはりの…」 オールド・オスマンの気がかりは、会話の最中、既に確信に変わっていたのだ。 トリステイン最大の規模を誇る学術組織、アカデミー。確かにその規模と各所へのコネクションは驚異と言えるが、逆に単体で独自行動が出来るほど、行動力がある組織ではない。 何かしらの情報収集を行う場合は、外部の機関に頼る必要がある。 オールド・オスマンも、独自の情報網を有しているが、それら機関が、アカデミーの要請で活動している、という話は入って来ていない。 つまり、アカデミーはクロの存在に気づいていない。或いは、噂話程度としか捉えていない。アカデミーは、一切動いていない、という事になる。 であるならば、ルイズの身内であるエレオノールがやって来た事にも、合点が行く。クロを解体するどころか、問題にさえしていないのだ。 むしろ彼女自身が、噂の内容に、妹が心配になって来た、というところであろうか。 「要するに、ミス・ヴァリエールに忠告する為に、ここまでやって来たのじゃな?」 エレオノールが語った、予想通りの真相に、オールド・オスマンは何度も頷いた。そんな彼をジト目で見ながらも、エレオノールは言葉を続ける。 いつの間にか全てを見透かすこの老人が、彼女は学院在籍時代から苦手なのだった。 「えぇ。今はまだアカデミーも、ルイズの使い魔には何の関心も示していません。ですが、火のないところに煙は立たぬもの。 この調子で常識外れな事を起こし続ければ、いずれはアカデミーも動くでしょう」 「それはあの黒猫次第じゃが…まぁ、わしからも伝えておこう」 感謝します、と答えたエレオノールは、本来の目的を果たすべく、質問を投げかけた。 「それで、その黒猫は本当に、噂通りなのですか?」 「ふむ…」 オールド・オスマンは、ヴェストリの広場での決闘騒ぎ、その、自分が見た一部始終を話した。 「ま、この老いぼれの言葉を信じるか信じないかは、別じゃがの」 最後に付け加え、美味そうに水ギセルを吹かした。その話の内容と、水ギセルの煙に顔を顰めながら、エレオノールは考える。 信じるには、やはり荒唐無稽に過ぎる。しかしオールド・オスマンは、こういった件に関しては、嘘はつかない人間だ。信じる他にない。 と言うか、にわかにその黒猫への関心が強まってきた。常識の範疇を遥かに超える黒猫。一研究者として、興味は尽きない。 解体はあり得ないとしても、その黒猫自身から、何者なのかを事細かに聞いてみたい。 「今はとりあえず、その話を信じます。真偽は、実際にその黒猫に会ってから、ですわ」 「ま、今すぐには会えんじゃろうがな」 「出かけているんですの?」「うむ」 ほんの1時間ほど前に、学院の門からトリスタニアに向け、大規模な砂煙が起きていた、おそらくルイズと黒猫だろう、とオールド・オスマンが話した。 「あれがその黒猫…」 道すがらに巻き込まれた砂煙を思い出し、眉をひそめる。自分は馬車の中だったから砂煙しか見ていなかったが、あれを黒猫が引き起こしたというのか。 「トリスタニアが目的地なら、戻るのは夕暮れ過ぎじゃろう。どうせ出張とか大嘘ついて来たんじゃろ? しばらく母校を歩いて時間を潰すのも、悪くはなかろうて」 最後の最後まで、自分を見透かされたような感じがして、ぶすくれるエレオノールだった。 + + + + + + 時間を早朝に、場所をトリスタニアに移し、ここは王立図書館。コルベールは日が昇ると同時に馬を走らせ、ここへやって来ていた。 司書にマントを軽くつまみ上げて見せ、コルベールは奥へ進んだ。以前と違い、目的は完全に定まっている。わざわざ外部の人間の手を煩わせる事も、無駄に膨大な書物を漁る必要もない。 探すは始祖ブリミルに関する資料のみ。早速『フライ』で書架上方へ浮かび上がったコルベールは、まず5冊ほどの本を取り、閲覧机に向かった。 学院の図書室よりも莫大な冊数を誇る王立図書館には、やはり始祖ブリミルに関する書物も多かった。しかし同時に、ページが風化しかけている物も多く、肝心のページが読めない本もあった。 それでも、必死に資料を探すコルベール。その目には、エキュー金貨の像が見えていたとか、見えていなかったとか。 「こんな時間から精が出ますわね、ミスタ・コルベール」 「はい…? み、ミス・ロングビル!」 突然名を呼ばれ、不意に顔を上げたコルベールは、一瞬で顔が深紅色に染まった。机の向かいに、オールド・オスマンの秘書、ロングビルが立っていた為である。 「こ、こここんな所で、奇遇ですなぁ!」 慌てて立ち上がり、にやけながら後頭部を掻くコルベールに、ロングビルは人差し指を立て、唇に当てて見せた。 「しーっ、ここは図書館、無駄な私語は厳禁ですわよ?」 「おっと、そうでしたな…」 とりあえず、直立不動になってみるコルベール。どう姿勢を作ればいいのか、解らなかったのだ。初心である。 一度書物を書架に戻したコルベールは、ロングビルに誘われ、図書館の近所に建つカフェに来ていた。 2人ともまだ朝食を摂っておらず、またロングビルが、話がある、との事だったので、軽食でも食べながら、となったのだ。 「そ、それでミス・ロングビル。お話というのは…」 向かい合う形で席に着いたコルベールは、相変わらず顔を真っ赤にしながら尋ねた。 このロングビル、深緑色の髪をアップにして眼鏡をかけており、その整った顔立ちも相まって、正に知的美人といった様相である。 学院の教師陣にも、彼女の隠れたファンは少なくないと言う。そんな彼女と一緒に朝食を摂っている。そのファンの1人として、コルベールが照れるのも、無理らしからぬ話だろう。 「ミスタ・コルベール、宝物庫に入った事はありまして?」 「宝物庫…ですか、どうしてまた?」 「えぇ、『破壊のゴーレム』と『不可思議の箱』なるマジックアイテムがあると聞きまして」 「あれですか…。私も以前、一度だけ見た事がありますが、不思議な代物でしたよ」 「不思議な代物、ですか? 私、魔法の品々には興味がありますの。何か教えて頂けませんこと?」 コルベールは記憶を探る。だが、それ自体は鮮明に思い出せるものの、どう形容すればいいのかが解らない。それだけ、不思議な物なのだ。 「うーむ、説明のしようがありませんなぁ…。あのような物は、私も過去一度も見た事がないのです、はい」 「それは残念ですわ…」 物憂げな表情を浮かべるミス・ロングビル。途端、取り乱したコルベールは、次の話題を振った。 「宝物庫と言えば! あそこはとても頑丈な構造になっているのは御存知ですかな!?」 「えぇ、扉は重厚な鉄製。閂も錠前も、とても立派なものが使われていますわね」 未だ表情の変わらないミス・ロングビル。吹き出た冷や汗を拭いながら、コルベールはさらに続けた。 「宝物庫は扉もそうですが、外壁にも『固定化』の魔法がかけられているのですよ」 「外壁にも…ですか?」 少し表情が変わる。瞳も期待が宿っていた。この機を逃すまいと、コルベールは知識を披露した。 「それも、どんな魔法が相手でも傷一つ付かないよう、何人ものスクウェアクラスのメイジを呼んで、何重にも『固定化』をかけてあるのです。 この鉄壁の守りを崩すには、並の手段では不可能でしょうなぁ…」 「興味深いお話ですわ。続きを聞かせて頂けません?」 「いいですとも! 確かに厳重な『固定化』がかけられていますが、私が推測するに、1つだけ、弱点がある可能性がありますな」 「あの宝物庫に弱点が? 一体それは?」 「物理的な衝撃、です」 「物理的な力…?」 身を乗り出すミス・ロングビル。これにはコルベールも有頂天になり、もはや歯止めが効かなくなっていた。 勢いのままに、自分の推論を話すコルベール。ミス・ロングビルも、真剣に聞いていた。 「というわけで、私が考えるに、数十メイルクラスのゴーレムが相手では、あの壁もさすがに耐えられないと思うのです、はい!」 額に流れる汗を拭うのも忘れ熱弁を振るったコルベールに、ミス・ロングビルは満足気な笑みを浮かべた。 「大変興味をそそられるお話でしたわ、ミスタ・コルベール」 + + + + + + 虚無の曜日たるこの日、普通であればのんびりとした時間が流れるはずであった。 しかし今日は、日が昇り切る頃にして既に、多くの思惑が交錯する日となったのである。 前ページ次ページ機械仕掛けの使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5929.html
前ページ次ページジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア 26.ブリミルの詩 どうしてだろうか。ルイズは古ぼけたオルゴールから流れる声をとても懐かしく思った。 神の左手ガンダールブ―― マーティンのルーンだわ。確かに彼らしいわね。 神の右手がヴィンダールブ―― 心優しく動物好き。まるでちぃ姉様みたい。 神の頭脳がミョズニトニルン―― ニルン。マーティンのいた世界の名前。 何か関係があるのかしら? そして最後にかの邪神……。記すことすらはばかれる…… 音は続くが、ノイズが酷くなって何を言っているのか分からない。 邪神?そんなの始祖ブリミルの話に出た事無いわよ? ルイズの頭が混乱する中、それとは別に何か他の言葉が聞こえ始めた。 「ルイズ?」 急に杖を持ち、何かをルイズは呟き始めた。まるで悪い物に取り憑かれたかの様に。 マーティンはルイズを止めようとしたが、近寄ることすら出来なかった。 何らかの障壁で守られている。 三の僕を従えて、我らはこの地で戦った。 オルゴールの詩が終わる。それと同時にルイズは呪文を完成させた。 『リコード!』 ルイズの意識はオルゴールの記憶へ。追憶がある日の光景を映し出す―― ルイズの意識が消えた後、女性のすすり泣く様な声がオルゴールから流れた。 誰も聞く者はいない。ティファニアはあまりこの声が好きではなかった。 ブリミルどこ?ブリミルまたキスして欲しいのに ルイズは気が付くと、どこかの部屋にいた。 何をしたのか自分でもよく思い出せない。確かオルゴールの歌を聴いて。 それからええと。と考えていると、目の前に何か動く物体があった。 「人かしら?」 辺りを良く見回す。以前の様な廃墟では無い。 粗末なテーブルと椅子が二つ。オルゴールは机の上にあった。 奥には、木製のちゃんとした二人サイズのベッドが見える。 動いていたのは可愛らしい赤ちゃんだ。 「だー」 一歳くらいだろうか?はいはいで近寄ってくる。どこかで見た事がある様な気がするが、 まぁいいか。と自分が倒れている事に気付き、起きあがって赤ん坊を見る。 「あぅ?」 不思議そうに赤ん坊はルイズを見る。しかし進軍を止めずそのままルイズの方へ。 「こらートール。どこ行ってるのー?」 奥の方から女性の声がした。ああ、あんな所に扉があったのね。 移動式のそれではなく定住のちゃんとした造りの家である事に、 このときルイズは初めて気が付いた。 開きっぱなしの扉から声の主がやって来る。長い耳を持ち、 お腹が膨らんだ美しい外見のエルフ。ルイズと目が合った。 両者共に驚く。エルフは何故我が家に知らない娘がいるのか。 ルイズは何故このエルフには胸部装甲板がないのか。 先に口を開いたのはルイズだった。 「…胸、ちっちゃい」 阿鼻叫喚の様でのたうち回りたい所を、どうにか子供が宿っていると念押しして耐える。 エルフの女は口を開いた。 「え、ええ。そうね。小さいわね。でも、それが何? おかしいのはサハラの皆よ。ええ。おかしいのはあっちよ。 蛮人であんなに大きいの見たこと無いのだからこれくらいが普通なのよ。 ええ普通ですとも間違いなく小さくなんてないわ。 例え小さくてもこれがいいって言ってくれたもの。 小さい方がいいっていったものだから子供もいるんだもの」 開き直って口走る。ご先祖様もやはりこういう癖があったのだ。 まだそうだとはルイズは気付いていない。 「そうよね。おかしいのはあっちよね!」 「そうよ!おかしいのはあっちよ!」 いつの間にやら意気投合。ガシリと握手を交わす二人。 「うぅー」 そっちのけなので不服そうな、可愛いらしい赤ちゃんだった。 ルイズが目覚めそうにない。えらい事になったと皆が騒ぐ中、 夜の女王だけは冷静だった。 『落ち着け。さっさと宴をしろ』 訂正する。ルイズの命なんてどうでも良かった。 パァンとまたもやフーケのハリセンがノクターナルの頭を叩く。 『やめよ。それは痛い』 「ならもう少し空気を読んでおくれよ。今どうなってるか分かってるだろうに」 『記憶を覗いているのであろう?その秘宝が持つ記憶をな』 やはり理解はしているのだろうか?え、とマーティンはノクターナルを見た。 「記憶、とは?」 『物事を覚えているのは何も生きている物だけではない。 先ほどの呪文は風変わりなれど、我らの力に良く似ている…様な』 そこをぼかすなよ。とツッコミを入れたいところだが、 スネてどこかに行かれると困る。ただマーティンは聞き返した。 「つまり、ルイズは無事であると?」 『左様。その秘宝…エイドラ由来であろう。アカトシュの匂いがするそれの記憶を覗き見ているのだ』 「プリンス・ノクターナル。もしやこの秘宝はこの地の…」 ノクターナルは笑った。 『おそらくそうであろうな。ドラゴンファイアの代わりであろう。 アカトシュもおかしな神だ。形を変え、アヌイ=エルから名を変えて』 どういう事だ?初めて聞く話だが、デイドラ王子が言うからにはある程度の正確性はあるのだろう。 「と、申されますと?」 『問答ばかりは飽きた。我は宴が始まるまで何も喋らぬぞ』 ふふふと笑う。まぁ、実は謀って嘘言いましたとか言いそうだし、 気にしたところで仕方ない。そう思ってソファで横になっている、 ルイズと姫の隣にいる事にした。 「あ、あら?ここは一体どこ――ルイズ?」 「おお、お姫様の目が覚めちまったか」 ぱちくりと上半身を起こし、アンリエッタは辺りを見回す。 「ええ、ええと、ここは?」 「盗賊ギルドだよ。お探しの物は二階でぐっすりさ」 フーケが忌々しそうに言った。アンリエッタは何も言わずに階段を探し、それを見つけて駆け上がって行く。 「いいねぇ!恋する乙女ってなぁさ!」 怒りを吐き捨てて外へ出て行った。テファはうつむき、 悲しそうに小さな声でごめんなさいと謝った。 さて、そんな頃。と言っても時間軸が違うから全く違うのだろうが、 ルイズとエルフの女性、サーシャはお話をしていた。 「ハルケギニア?聞かないわね」 「ミッドガード?イグジスタンセア?」 両者の間にはやはり違う感覚があった。 「始祖ブリミルについて知ってますか?」 「始祖?ブリミルは私の夫だけど」 そんな大したのじゃないわよ。とまんざらでもなさそうに笑う。 サーシャに抱かれる赤ん坊は眠くなっているようだ。 「夫…?」 ええと、魔法は使えないけど杖は…あったわ! とりあえず見せてみる。 「あら、それって杖よね。蛮人ってこれがないと魔法が使えないから不便よねぇ」 通じた!と言うことはここってまさか。 ルイズが6000年前の過去に来ているのだと理解するより早く、 他の部屋から泣き声が聞こえてきた。 「あらいけない。ちょっとこの子よろしく」 ルイズに眠っている赤ちゃんを手渡し、サーシャは他の部屋へと行った。 「えーと」 スヤスヤ眠っている。この位置で腕を固定させ、 とりあえず今の現状を考える。 「あのオルゴールを聞いて、何か気が付いたらここにいたのよね。 魔法が使えたのかしら?」 試しに使ってみたい所だが、下手をすればこの赤ん坊が怪我をする。 いくら何でもそんな道に外れる気は無い。 「過去を見る魔法…?いえ、そんな物聞いた事無いわね。 ありえるとしたら水の系統で頭を…でも…」 「おや、トール。可愛らしいお姉さんに抱いてもらって羨ましいな」 背後の扉辺りから声がした。振り返ってみると、 どこかウェールズ皇太子の面影があるような気がしないでもない男がいた。 しかしその顔は優しげで、彼の様な勇ましさは見受けられない。 「初めましてお嬢さん。僕はブリミル――」 「ブリミル!?その、ええと、ごめんなさい。つい取り乱しちゃって」 何かもうちょっとこう、格好良いのを想像していたのだけれど。 やっぱり神様っていうのはそんな物なのかしらね。 熱狂的信仰者ならともかく、彼女は最近神に対する認識を改めだしたので、 そこまで驚きもしなかった。 「いや、そりゃぁね。こう見えても結構有名人だしね」 よく見たらこの人オモロ顔ね。ああ、だから像には顔が無いんだわ。 自分のご先祖様に向かって酷い言いようである。 「ところで、君はどうしてここに?ここらじゃ見ない顔だけど」 いやそれが。とルイズは話を切り出した。 「いつの間にか、ここにいたんです。魔法を使ったのだと思うのですけど…」 何故だろうか。急に辺りが冷たくなった。悪寒と言うのだろうか? ふと、ブリミルの後を見る。二人の赤ちゃんを持ったサーシャが鬼の目で立っていた。 「ねぇ、あなた」 「へ、いや、僕じゃないよ?」 何の話だろうか。二人の赤ちゃんをベッドに寝かせて、 ブリミルの方へ向き直った。 「魔法の実験で私を使わなくなったのは良いわ。誉めてあげる。でもね」 「違う!誤解だよサーシャ!ほら、トールもガルドもアールブヘイムも泣いてしまうよ!」 修羅場っている。誤解を解かないと。そう思ってルイズはサーシャに言った。 「違うんですサーシャさん。私は気が付いたらここにいたんです」 「そう。気絶させてここに運んで来たのね?」 火に油を注いでしまったらしい。目をランランと輝かせたサーシャは、 ブリミルの方を見た。 「ねぇ蛮人。ちいちゃいのが好きって言ったわね。この子とってもちいちゃいわね」 「何言ってるんだいサーシャ!僕が愛しているのは君だけだ!神にかけて誓うよ!」 「それ、何回目?」 う。とブリミルは言葉に詰まった。どうやら誓っては破っているらしい。 「そう。いいわ。最近育児で少し溜まっていたの」 パリパリ、と彼女の手に雷光が走る。ひぃ、とブリミルはおののいた。 「お腹の子に障るよサーシャ。だから…」 「大丈夫。足は使わないわ。一撃で仕留めるから」 言ったくせに言ったくせに、私が一番好きだって言ったくせに。 ちいちゃいのがいいって。そうね。たしかにそうだわ。 「わたしよりぃいいいいいい!ちいさなぁああああああああ! 子ぉおおおおおおおおにぃいいいいいいいいい!」 雷光が飛ぶ。ブリミルは黒こげになって吹き飛んだ。 あれね。ブリミルは地雷と結婚したんだわ。 赤ん坊を庇ったルイズも吹き飛び、そして彼女は目を覚ました。 「こんなのを見てきた訳だけど。どう思う?」 もう一度オルゴールを聞き直し、「リコード」の呪文をルイズは正しく理解した。 そしてマーティンとティファニアに尋ねてみた。 「つまり、教会の教えが間違っていると言うことか?そこら辺どうなのかなデルフ」 デルフの反応が無い。訝しみ鞘から出す。 「デルフ?」 「知らね。覚えてねぇ」 テファはやっぱり。と言って話を始めた。 「私たちが聞いた時もそうだったんです。ガンダールブが来たら思いだすかもと言ったのですけど」 「思い出せねーな。忘れちまった」 言葉の節々に覚えていそうなトゲがある。敢えて言いたく無いのだろうか? 「オルゴールの最後の声はサーシャのだったわ。あれは一体どういう事かしら?」 「…悲しい事があったんだ」 デルフはそれだけ言って黙った。ルイズはデルフに強い口調で聞き返す。 「ちょっとあんた!覚えてるんでしょ!何で言わないのよ!」 「うるせぇ!忘れちまったもんは忘れたんだ!思い出したくねぇんだ! 何があったか忘れたいんだ。忘れさせてくれよ…」 ルイズはデルフの気迫に何も言えなくなった。マーティンはそっとデルフを鞘に戻す。 「誰でも言いたく無い事はある。その、すまなかったねデルフ」 「わりぃ相棒。でも、言いたかねぇんだ」 「ああ。分かってるよ。昔の事を聞いてどうにかなる訳でもないしね」 さて、時刻はすっかり昼をまわっている。 何人かの盗賊やタルブの村人が宴の準備をする中、 アンリエッタはまだ目を覚ましていないウェールズの手をしっかと握っている。 前ページ次ページジ・エルダースクロール外伝 ハルケギニア
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2995.html
前ページ次ページゼロの使い魔ももえサイズ ももえの里帰りに付き合うことになった、ルイズとキュルケとタバサ 今晩は宿を取って、明日ももえの実家に向かうことになったのだが――― 「お客様、明日はどちらへ?」 夕食をとり終えた4人に対し、宿主はこんな事を聞いてきた。 「明日は、あの森のほうへ行くことになってるわ。」 ルイズは窓から見える森を指差して言った。それを聞いた宿主は大いに驚いてルイズにこう忠告した。 「お客様、悪いことは言いません。あそこはお止めになったほうが………」 「どうしてなのよ?」 「いや、お客様、そういうつもりじゃありません。ただ………」 「ただ?」 宿主は冷や汗を流しつつも恐る恐る口を開いた。 「あそこは人や動物が入るとそのまま帰って来れなくなる魔性の森と呼ばれております。 馬すら恐れて近づこうともしないところでありまして、ですから…………」 「じゃあ明日から歩きだね!」 ももえはにべも無くそう宣言した。 「ちょ、ちょっと! あんたそんな危険なところに私達を連れて 「行くよ。ここから歩いていけば半日ぐらいで実家に着くはずだから。」 実家という単語を耳にした宿主は恐怖に慄き、「あははは………」 これにはキュルケも苦笑するしか術がなかった。 (ちい姉さま………私、何も成し遂げられずに死ぬかもしれません………。) ルイズは天に祈りをささげるしかなかった。一方その頃、タバサは紅茶のおかわりを頼んでいた。 「おかわり。」 「あっ、はいただいま!」 タバサが空のカップを軽くかかげると宿主は慌てて厨房に向かって走り出した。 ゼロの臭い魔実写化決定!制作はTMA「ゼロの使い魔死神友情タバサの裏設定フレイムデルフリンガーシルフィード香水下級生ももえサイズ」 「もーもえサイズを知ってるかい?」 「「「もーもえサイズを知ってるかい?」」」 「ももえとゼロ魔のクロスがでーるぞっ!」 「「「ももえとゼロ魔のクロスがでーるぞっ!」」」 「カオス!」 「「「イミフ!」」」 「カオス!」 「「「イミフ!」」」 「カオス!」 「「「イミフ!」」」 「カオス!」 「「「イミフ!」」」 「ひーめなカメナもよろしくねっ!」 ももえは胸に「死神」と書かれたワッペンが刺繍された体操服を着て3人を先導する。 更に、ルイズ達もそれぞれの名前が書かれてるワッペンが刺繍された体操服を着ていた。ルイズ達にはその文字が自分たちのことを意味するとはわからなかったのだが タバサは見た感じ思いっきりマッチしていたが、キュルケの場合胸がぱっつんぱっつんなので、走るたびに胸が擦れる音がルイズの耳元まで聞こえてくるのである。 (………何よ、おっぱい星人のくせに!) ルイズは自分のブルマが思いっきり股に食い込んでいることに気づかずに走り続けていた。 「これを着て、これを歌いながら走ってちょうだい。」 この宿を出る前に、ルイズ達はももえから体操服とブルマ一式を渡されていたのだ。 「あの、これは………」 「これを着て走らないと大変なことになるから」 そう言って、渋々着たのである。キュルケとタバサはまんざらでもなさそうだったが 「ゼロ魔のクロスはおもしろいっ!」 「「「ゼロ魔のクロスはおもしろいっ!」」」 「マイナーすぎても気にしない!」 「「「マイナーすぎても気にしない!」」」 「有名ーなものだとアンチ湧くっ!」 「「「有名ーなものだとアンチ湧くっ!」」」 「たとえばt 「ちょ、ちょっと待って! これ以上はさすがにきけ…」 「危ないっ!」 思わず足を止めたルイズに大きな口をあけたワームのようなものが触手を伸ばして襲い掛かってくる。 「きゃあああ!!!」 「とうっ!」 ももえは軽やかに飛ぶと体を光らせてそのままワームに突撃する。 「はああああああっ!!!!」 『デルフリンガーの能力』 そのままももえの体はワームを貫通し、ワームは程なくして消滅した。 「ごっ、ごめ 「歌うのを止めちゃだめ!」 ももえにそう言われて慌てて歌の続けるルイズ達 程なくしてももえも追いつき、更に歌は続いていく。 「ももーえサイズはおもしろい!」 「「「ももーえサイズはおもしろい!」」」 「でも他人には勧めづらいっ!」 そこでももえは足を止めた。思わずルイズ達も足を止める。すると 「うわぁ…………」 そこには現代風の一軒家があった。扉には一つ目がついていて、とても不気味な建物だとルイズは思った。 「ここが………」 「そう。」 さっきまで明るかった陽が急に影を潜め、突如として大きな雲に覆われた。 更に、風がびゅうびゅう音を立ててルイズ達に容赦なく襲い掛かる。時々目も開けられなくなるぐらいの激しい風だった。 「ここが私の実家。」 ももえはうれしそうにそう答えたのであった。 「…おかえり…なさいま…せ。ももえ…お嬢様」 門をくぐると、メイドが一人出迎えてくれた。 魔法学院のシエスタとは違いこのメイドはとても物静かな雰囲気を漂わせていた。 「この娘が私の家でメイドをしているメイドのメイちゃんだよ。」 「…ももえ…お嬢様の…ご友人…です…か…。 …はじめ…まして…メイドの…メイ…と申します……」 「はっ、はじめまして……モモエの友人のルイズです。」 彼女の恭しくも礼儀正しい態度に押されて、ルイズはつい友人だと嘘をついてしまった。 それを見ていたタバサがももえに耳打ちをする。 「………」 「………」 更にももえはタバサに耳打ちをした。 「どうしたの、タバサ?」 キュルケがタバサに小声で尋ねるとタバサはこう答えた。 「彼女はあれがデフォルト」 「あっ、そうなんだ。」 キュルケもなんとなく納得した。 通された客間は靴を脱がなければならないらしく、靴を脱いだメイやももえの後に続いてルイズ達も靴を脱いで下駄箱の中に入れる。 客間の中央には小さなちゃぶ台が置かれていて、メイとももえは真っ先にそこに腰を下ろした。ルイズ達もそれに続く。 程なくして、それぞれの目の前に熱い茶が入った湯呑みが置かれた。 ルイズはそれを飲む気がしなかったのだが、タバサはそれを音を立てながら飲んで「おいしい」とひとり、呟いた。 しばらく沈黙が続いた。タバサがおかわりと一緒に柿の種をぽりぽり食べる音以外は何一つ音がしなかった。 ルイズの目の前のお茶がすっかり冷めてしまった頃に、ももえはようやく立ち上がった。 「あんた達はここで待ってて。」 「ちょ、ちょっとあんた、私達を置いてどこに ルイズは思わず反論するものの、ももえはそれを聞く耳持たずに客間を出て行った。 「…柿の種…食べます…か?」 「いや、私はっ、あのっ、その………」 突然メイが声をかけてきたのでルイズは大いに慌ててしまった。あたふたを手を振って自分でも何をしているのかよく分からなかった。 「…柿の種が…お気に召さない…のでしたら……御福餅…も…ありますけど…。」 ???ものしり館??? 御福餅【おふくもち】 御福餅本舗が製造販売する菓子のこと。 パッケージが赤福と類似していることで有名。また赤福と同じく製造日・原材料の偽造を行ってたとして農林水産省から立ち入り検査を受けた。 「じゃ、じゃあっ、そ、それをいただくわっ」 ルイズは不本意ながらもメイの好意に甘えることにした。それを聞いたメイは恭しく礼をすると立ち上がって下駄箱のほうまで向かう。 「はぁ………」 ようやくルイズは目の前の冷め切ったお茶に口を付けた。 無理も無い、初めて使い魔の家にやってきていきなりこんな見た事も無いようなメイドに迎えられたのだ。 緊張しない者は普通ではないとまで思った。お茶は少し水っぽくてよく味が分からなかった。更にお茶を飲もうと湯飲みに口を付けると 「メイさーん! 私はこのキヨーケンのシュウマイをひとつ!」 ルイズは思わず音を立ててお茶を噴出した。 ももえは屋敷の一番奥の部屋をノックした。返事はない。いつもの事だ。 ももえは扉を開けた。部屋は大きく殺風景なものだった。安楽椅子に腰掛けている部屋の主がそこにいた。 部屋の主は痩身の女性だった。美しい顔が病のせいで見る影も無くやつれていた。「誰だ」 「ただいま帰りました、お母様」 ももえはその女性に近づくと、深々と頭を下げた。 しかし、その人物はももえと認めない。そればかりか目を爛々と光らせてももえを睨み付ける。 「下がりなさい無礼者。王家の回し者ね? いい加減に諦めたらどうですの? 私は死んでもこの娘を手放しはしないのだから。」 ももえは身じろぎもしないで、母の前で頭をたれ続けた。 「下がれ! 下がれと言ってるのが分からないのか、このバカ野郎!!」 母はそう言って、ももえに向かってテーブルの上のグラスを投げつけた。ももえは避けることなくそれを受ける。 頭に当たったグラスは床に当たって大きな音を立てて砕け散った。頭に少し血がついたももえは顔を上げた。 「こんな茶番劇やってられっかぁーーーー!!!!!」 ももえはカマを取り出して思いっきり振りかぶった。 ざしゅっ 母の首は壁に当たり、そのまま音も無く床に転げ落ちた。 『ももえのカマで斬られた者の存在はももえが肩代わり』 「………ママ?」 「裏設定の齟齬?」 ルイズがそう問い返すと、メイは頷いた。 「ここから先はわしが説明いたしましょう。」 そう言ったのが御福餅が乗っている皿を持ったメイに対し、崎陽軒のシュウマイが乗っている皿を持った老齢の男性だった。 「ももえお嬢様の教育係を勤めておりますシュテンプケ博士と申します。以後お見知りおきを」 突然現れた男に事の顛末を説明されるのはどこか嫌な気はしたものの、メイが話すと恐らく聞いてる方がいてもたってもいられなくなるので正直ありがたいとルイズは思った。 「そうでございます。……このタバサ殿にも裏設定があるように、ももえお嬢様にも裏設定がございます。」 「はぁ………」 ルイズはわかったような分かってないような顔で頷いた。いや、実際にはほとんどわけがわかってないのだが 「タバサ殿の裏設定とももえお嬢様の裏設定……例えば二人ともそれぞれに母親がいたとしたらどうします?」 「えっ?」 ルイズは思わず首をかしげた。それに構わず博士の話は続く。 「タバサ殿の裏設定には執事がいて、ももえお嬢様の裏設定ではメイドがそれぞれいました。 それはもう互いに自らの存在を賭けて争ったわけなのであります。その戦いに勝利したメイはタバサ殿の裏設定を完全に消し去りメイドの地位を手にしましたが……」 ルイズはあごに手を当てて考え始めた。つまりタバサとももえの裏設定が入り混じったのがこの家であり、メイドであり、母親であったりすることを。 「って、ちょっと待って。今さっき"消し去った"って………」 「タバサ殿の裏設定とももえお嬢様の裏設定であるお館様は必死に戦ったのであります。しかし、お館様は敗北されてしまわれて母親の中に封印されてしまったのであります………」 「つまり、タバサの母親の中にモモエの母親がいるってわけね?」 「その通りでございます。」 キュルケの問いに博士は頷いた。キュルケはシュウマイを手にし、それを口に運ぶ。 「おいしい!」 「お褒めの言葉を授かり、光栄でございます。」 キュルケの賛辞に博士は恭しく敬礼した。ふと見るとルイズの目の前には御福餅を持ったメイがいた。 「…あーん…してくだ…さい。」 「いや、その別にあーんなんてしなくても。」 「…お願い…です。……あーん…してくだ…さい。」 見ると、メイは泣きそうな顔でこっちを見ている。餡だらけになった手から今にも餡が零れ落ちそうである。 「しっ、仕方ないわね。じゃ、あー…… そう言ってルイズが口を大きく開けた瞬間、客間の扉が開いた。 「ご挨拶が送れて申し訳ない。私が死神家当主死神デス子だ。」 そこには水兵服を着て、禍々しい竜のようなものをかぶった女性が仁王立ちしていた。ももえもその横にいる。 「あ………」ルイズは愕然とした。 柿の種の2袋目を食べていたタバサも、シュウマイに舌鼓を打っていたキュルケも、ももえもデス子も、博士も皆、ルイズのほうに注目していたのだ。 それを知らずにメイは御福餅を餡がついた指ごとルイズの口の中に突っ込んだ。 「!!!!!!」 ルイズは顔を真っ赤にしてはだしのまま客間を飛び出した。 「あーあ。どうしたんだろうね、ルイズちゃん。」 誰一人止めるものもおらず、ルイズは屋敷内を走り回るのであった。 『食後の運動は危険ですので止めましょう。』 「あっ、倒れた。しかもものすごく苦しそうに。あー、わき腹押さえちゃって、足をじたばたさせてるね。」 ももえは遠くからルイズの状況を事細かに実況する。すかさずメイは水の入ったコップを用意する。 「いや、その必要は無いだろう。」 デス子は冷静にそういった。その瞬間、ルイズの居たところの床がすっぽりと抜け落ちルイズはそのまま落下した。 「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………」 「さすがにアレはちょっとやばいんじゃ……」 「なあに力尽きたら担架で担がれて勝手に戻ってくるから安心しろ」 それを聞いたタバサは安心して3袋目の柿の種に手を伸ばしたのであった。 ※ おわり これまでのご愛読、ご支援ありがとうございました。 ※ 次回から始まる「ゼロの使い魔死神友情タバサの裏設定タバサの母フレイムデルフリンガーシルフィード香水下級生ももえサイズ」に乞うご期待!!! 前ページ次ページゼロの使い魔ももえサイズ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4048.html
前ページルイズVSマジク~史上最哀の会合~ 補足編『そーいやなにかをわすれてる?』 フォルテ・パッキンガムは、ようするに唐突な男なのだ。 レティシャも、そう認識している。――彼の弟とおなじに。 なにをするのも唐突。なにをいいだすのも唐突―― 午前の講義を終えてすぐに、教師控え室に呼び出したと思えば、唐突にこう言った。 「マジクが――消えた」 その言葉の意味を理解するのに、数秒を要した。 「………」 しばらくしてレティシャは、ようやく思いついた。 「消えたって…塔にはもう戻ってこないってこと?」 旅費までだして旅にださせたことは、レティシャも聞いていた。 あの子の性格なら、そのまま居ついても不思議はない。 「それだと、楽でいいのだがな」 フォルテに否定されて、レティシャは最悪のことを思いつく。 「まさか――死んだの?」 信じられない表情で彼女はフォルテに詰め寄る。 「魔術はともかく、よくあんな体術で年間首席をとれたものだと思ったけど… それでも今のグレードでは、間違いなく当代一の魔術士よ」 「おかげで私も、長老たちを抑え易かったがね」 フォルテが椅子に座り直す。 ふっと顔をあげるようにして、続ける。 「消えたというのは文字どおり、この世界から消えたということだよ。 旅にでて四日目から情報がつかめなくなった。 死んだにしろ、ネットワークに死の情報くらい残るだろう」 「でも、ネットワークは完全ではないでしょ?」 「そのとおりだが…今のネットワークでは考えにくいな。 たかが一人の位置情報がわからないなど…ありえないだろう」 フォルテはアザリーが消える前に、植物状態から治された。 そのときに迷惑料を払うといわれた。 彼女が消えたあとに、彼女が押さえていたネットワークの領域をそっくりもらったのだ。 おまけとして、天人のマジック・アイテムに関する情報までついていた。 「でも…ありえるの? 世界から消えるなんて…」 「まあいい。そんなことよりも当面の問題は…」 「?」 レティシャの疑問にフォルテは重々しく答える。 「当面の問題は…彼に…キリランシェロにばれたらどうするか、だ」 ――とある村。 いまだ開発してからさほど時は経っていない。 そこに彼はいた。 ストレートなようで、どこか曲線を描くような彼女のロングヘアが、風にゆれていた。 それを見たオーフェンはやさしい声で 「風が吹いてきたな」 「そうね」 やわらかい瞳で彼女は応える。 「お腹の子にも、君にもよくないから戻るとしよう。」 誰だオマエ?といいたくなるほど、穏やかに彼は妻を気遣う。 「ねぇ?」 「何だ?」 「この子の名前…もう決めたの?」 「さあね。おとこの子か、おんなの子か… まだわからないんだ。決められないさ」 そのまま和やかな雰囲気が、家につくまで続く…はずはなかった。 「ならば黒魔術士殿、いやパパ魔術士殿。 ラッツベインなどいかがでしょう?」 キースがムーンウォーク【失敗】をしながら、あらわれる。 「何でだっ?何が悲しくてチンピラ殺しなどと、自分の子につけなきゃならんのだっ?」 「いやぁ、私の故郷その1などでは、向こう三軒両隣り、家族みんなおんなじ名前で」 「じゃあ何か、誕生日の時、家族でわきあいあい、はっぴーばーすでーチンピラ殺し、 とでも歌うのか?もしくは、 学校で出欠とるとき、チンピラ殺しチンピラ殺しチンピラ殺しって呼び続けるのか? 嫌だわい、そんなもの」 「思い返せばスリリングな毎日でした」 「嘘をつけ―っ!」 オーフェンが息が切れるまで、叫ぶとまた人がでてくる。 「でも、オーフェンの子ならなんか、納得よね」 「そうですわね。コギーお姉さま」 「岩で十分よ。岩で」 タバコを吸いながらドロシー。 「まぁ、暗殺技能者の子としちゃあ妥当だろ」 「サルア、余計なことはいわないほうが…」 「モグリさんの子供、はやくみてみたいですぅ」 「先輩。どうせ悪魔みたいなやつですよ」 他にも流星特攻娘イワンナ、格闘お嬢様ミシリム・チャコール・グレイや、 おしおき水のティナ、鉄の柳の老人、交通法規くそくらえな御者、 教主様、カーロッタ、借金なれペティア、……… この村に住む常識外の人間がつぎつぎでてくる。 「て・め・え・らぁぁぁぁっ!」 大爆発が炸裂する。 今日もまた開発は進まない。 前ページルイズVSマジク~史上最哀の会合~
https://w.atwiki.jp/ankasekai/pages/102.html
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ 彼女たちがどのような物語を紡ぐのか――それはまだ誰も知らない ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ///\\} |,,.. -―-.. __| | 〉 . /// f'" |_ |___ 〉 ///二/{{{{ | _|____〉 .{ {{__ア {{{{/ |] | | iL 〃 {{{{ ', [ |に二可] 〃 Ⅵ ', V 夊こ__ツ! / / ハ ', | \__ ノ な、なぁ…アニムスの奴、大丈夫かな…? { / / 、 \ |', | | | { { /__ \ ...、 |__, | | | { { {⌒x=ミメ 、 ノ, |z∧ | , , { { {xイ ん心゙ |', !⌒ Ⅵ /} / { 人 {, 弋zツ } 、VxXxXリ /_j / \jハ 〈 ¨¨¨¨¨l / { | ∧ 爪' |\ \ | {{込、 (/⌒_) / / | ⌒` __ -=ニニニニ{⌒ ー-=ニ __ イ ∧ _!≦ニ≧x、 {ニニニニニニニニニニニ{  ̄”“''く ̄ ̄\//\ /{_ノ ̄__ニニニニニニニ, / }___j―‐=ミ く_/_/__ノニ=‐‐ニニニ/7⌒7=‐- '\//////////\ / ノ(__ニ=/./ { } ≧s。_ / 、/////////∧  ̄ //////// 厶イ { / |__ //////// ∧ ///////////// ! ∧__/} ,///\_ ////////////,} ////////////// }/XxXx/ /////////≧s。///////// / /〃 / 人 { ∧ ` i } |/ | /, ′,' / i \ ', 、 ノ | | i | ノ' ハ 〃 | \从 ∧ ヽ } /,.斗匕 八 ,. -‐‐- 、 ,. -‐- 、{ ゙i 人 / \ / ', | λ /ハ / ', | ( _ , ′ ___ , ' , ハ ∧ ', / ヽ,\, ∨゙ | / / / } / l 从 , i 私が聞きたいわよ、この馬鹿使い魔ぁぁぁぁぁ! . 八 i ハ ,. -‐====ミ、\ ゙i /,. -‐====ミ、| | / | ,. -、. ヽj | ≦´ `ミ `7 Iw/彡 `ミハ ,′ ', _ ' ο 从 ノル'# 刈厶イ. 从, 刈 i ∧ . ノ | ノ`ー-===-‐彡 `ー -===-‐彡 ! x ´ `ヽ ,' !゙ ,′ | ハ 乂 __ ノ . / | ′ /^ヽ___,r‐一'`ヽ U | ∧', } . 〇 / | 八. / -‐…‐- 、 ' , | i ヽ 、 / ! ヽ / , ´ ` 、 ヽ ' 从 \ ', . 厶 / ト. |, ' \ | / 八 ヽ丶 . /‐===ミ |// ` _{ }_, イ ト‐-ミ、_ ∧ ,///////// |,///| 人 __ _ _ _ 丿 / ∨////} ', / |////// |,///| \  ̄ ̄ ̄´/ / \///| ヽ 厂//// /_///{ `ー┐ r‐一' { ヽ/∧ 物語へのリンク ◆第一部 ttp //yaruoshelter.com/test/read.cgi/yaruo001/1423213133/4667-5252 ◆まとめ一話 http //yaruok.blog.fc2.com/blog-entry-6133.html ◆第ニ部 ttp //yaruoshelter.com/test/read.cgi/yaruo001/1433420551/5981-6301 ◆まとめ一話 http //yaruok.blog.fc2.com/blog-entry-6530.html ストーリー 軍艦の魂を宿した少女…通称「艦娘」の天龍は建造された瞬間に、異世界ハルケギニアに召喚されてしまう。 天龍を召喚したのは、トリステイン魔法学院の生徒でありながら魔法の才能がまるで無い「ゼロのルイズ」 失敗とはいえ、召喚の儀式によって呼び出された天龍は、「使い魔」としてルイズと契約のキスを交わす。 すると、天龍の左手には使い魔の証である契約のルーンが浮かび上がった。 こうして、ルイズと「平民」扱いされる天龍との奇妙な同居生活と冒険が始まった。 登場人物 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール・・・原作ヒロイン。天龍を召還してしまう 天龍・・・主人公。原作通りの艦娘 + ... キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー・・・学生。原作通り タバサ・・・学生。原作通り シエスタ・・・メイド。原作通り アニムス・・・学生。ギーシュ役 クラウド・・・教師。コルベール役 志々雄真実・・・校長。オスマン役 桂木弥子・・・秘書兼盗賊。フーケ役 概要
https://w.atwiki.jp/zensensyu/pages/570.html
ちゃん 414 名前:改めて :05/03/10 16 33 47 ID PcG6MDe/0 全ちゃん入場!! 万能フリーターは生きていた!! 更なる研鑚を積み人間蛸が甦った!!! 蛸神!! 八ちゃんだァ――――!!! 漬物のロングセラーはすでに我々が完成している!! 日本胡瓜きゅうりのキューちゃんだァ――――!!! 文明が栄えしだい食いまくってやる!! チタマ代表 ガッちゃんだァッ!!! 素手のトイレなら我々の歴史がものを言う!! 素手で拭く スカトロッチュアー みっちゃん!!! 真の名前を知らしめたい!! だけどちっちゃいから さっちゃんだァ!!! 女は一昨年三月に離婚したがギャグの数なら全階級オレのものだ!! ドリフのギャグ職人 加トちゃんだ!!! 後ろ対策は完璧だ!! ドリフターズ ケンちゃん!!!! 全オレンジジュースのベスト・テイストは私の中にある!! ジュースの神様が来たッ なっちゃん!!! 女の子人気なら絶対に敗けん!! 女の子のおもちゃ見せたる 人形隊長 リカちゃんだ!!! バーリ・トゥード(ハッキングから今夜のおかずまで)ならこいつが怖い!! 日本のピュア・BBS 2ちゃんだ!!! 台湾大連盟・誠泰太陽隊から炎の先発投手が上陸だ!! 西武ライオンズ 張(チャン)!!! ルールの無いコントがしたいからコメディアン(芸人)になったのだ!! プロのコントを見せてやる!!ウッチャンナンチャン!!! まちがってるよーとはよく言ったもの!! 達人の人間不信が今 実戦でバクハツする!! 警視庁護身術 まあちゃんだ―――!!! SPECIALこそが地上最ダークのポケモンマンガの代名詞だ!! まさか進化して泣かれるとはッッ ラッちゃん!!! 飾られたいからここまできたッ キャリア一切不明!!!! 不二家のマスコット(飾り)ドール ペコちゃんだ!!! オレたちはスルメイカではない酢漬けイカなのだ!! 御存知駄菓子 よっちゃん!!! サイボーグの本場は今や猫にある!! オレを驚かせる奴はいないのか!! サイボーグクロちゃんだ!!! チャアァァァァァンッ会話不能!! ハーイ!!! バブー!!! イクラちゃんだ!!! 通訳は実戦で使えてナンボのモン!!! 超実戦イクラ語通訳!! 本家磯野家からタラちゃんの登場だ!!! 一発芸はオレのもの 豆は思いきり鼻に入れ思いきり放つだけ!! ワハハ本舗統一王者 梅ちゃん 菓子を届けにおばあちゃんの家へきたッ!! 石詰め全グリムチャンプ 赤ずきんちゃん!!! 体重に更なる磨きをかけ ”ニシタマオ”タマちゃんが帰ってきたァ!!! 今の自分に水分はないッッ!! ドライ・シーウィードふえるワカメちゃん!!! おもちゃのかんづめが今ベールを脱ぐ!! 森永製菓から キョロちゃんだ!!! コマの中でならオレはいつでもほとんどエキストラだ!! ただの幼稚園児 コボちゃん 愛称で登場だ!!! 芸人の仕事はどーしたッ 野球の炎 未だ消えずッ!! 仮装も監督も思いのまま!! 欽ちゃんだ!!! 特に理由はないッ 酒屋の手伝いすれば強いのは当たりまえ!! 相撲部にはないしょだ!!! 日の下開山! ごっちゃんがきてくれた―――!!! 海物語で磨いた実戦リーチ!! 三洋物産のデンジャラス・水着レディ マリンちゃんだ!!! エロスだったらこの人を外せない!! 超A級エロ園児 クレヨンしんちゃんだ!!! 超一流小学生の超一流の食い意地だ!! 生で拝んでオドロキやがれッ 第三小学校3年3組の鋼鉄人!! ののちゃん!!! 鍋はこの具材が完成させた!! マロニー株式会社の切り札!! マロニーちゃんだ!!! 輝ける王者が帰ってきたッ どこへ行っていたンだッ ヘッドコーチッッ 俺達は君を待っていたッッッ大ちゃんの登場だ――――――――ッ 加えて負傷者発生に備え超豪華なリザーバーを4名御用意致しました! ジジ臭い小学生 ちびまる子ちゃん!! ばくだんいわ 宮里藍ちゃん!! 食品の巨人!マルちゃん! ……ッッ どーやらもう一名は到着が遅れている様ですが、到着次第ッ皆様にご紹介致しますッッ 関連レス 419 名前:水先案名無い人 :05/03/10 16 52 13 ID 5885PzBy0 クロちゃん好きだったよ キューちゃんはなぜかよく冷蔵庫で乾燥しているな 420 名前:水先案名無い人 :05/03/10 17 18 48 ID Y3qNX6ny0 414-417 >今の自分に水分はないッッ!! ドライ・シーウィードふえるワカメちゃん!!! ここ最高、泣いた。 ところでコボちゃんは小穂で本名だったり 421 名前:水先案名無い人 :05/03/10 17 26 50 ID 2QIp1/iN0 414-417 GJ! だが… ∧_∧ ┌──────────── ◯( ´∀` )◯ < 僕は、神山満月ちゃん! \ / └──────────── _/ __ \_ (_/ \_) lll 422 名前:水先案名無い人 :05/03/10 18 13 50 ID XVZZX76r0 輝ける王者大ちゃんにハゲワラ 423 名前:水先案名無い人 :05/03/10 18 39 07 ID CjE+r0mX0 張をいれるんだったら、張誌家とフルネームで書いてほしかったな 430 名前:水先案名無い人 :05/03/10 21 46 56 ID O7xr8VG20 414-417 子連れ狼は入れるべきだろう。 458 名前:水先案名無い人 :05/03/12 10 49 30 ID 4ESrYbji0 414-417 ワロス ほっちゃーん、ほ、ほああああー が欲しかった コメント 名前
https://w.atwiki.jp/nitendo/pages/5852.html
シロちゃん とは、【星のカービィ3】のキャラクター。 プロフィール 作品別 元ネタ推測 関連キャラクター コメント プロフィール シロちゃん 他言語 別名義 シロ 種族 【ネコ】 性別 メス 初登場 【星のカービィ3】 【ナゴ】の恋人である白い猫。 作品別 【星のカービィ3】 レベル5-5に登場。ゴール地点でナゴを待っているがこのステージにはナゴがいないためどこか別のステージから連れてこなければならない。 元ネタ推測 白猫 関連キャラクター 【ナゴ】 コメント 名前 全てのコメントを見る?
https://w.atwiki.jp/nekocategory/pages/31.html
寧ちゃんと茶虎~ず&舞ちゃん このカテゴリーに含まれる猫ちゃん 舞ちゃん 幸せになりました♪ 寧ちゃん 幸せになりました♪ りゅうくん 幸せになりました♪ じぇんとるくん 幸せになりました♪ ビビちゃん 幸せになりました♪ しっぽくん 幸せになりました♪ クロちゃん 幸せになりました♪ 2010年04月18日: ■ビビちゃんに会って来ました。 2009年10月16日: ■リュウくん正式譲渡 2009年09月27日: ■舞ちゃん正式譲渡です。 2009年06月21日: ■じぇんとるくん正式譲渡に行きました。 2009年06月19日: ■ビビちゃんちの猫通路 2009年06月19日: ■しっぽくん正式譲渡です。 2009年06月19日: ■ビビちゃん正式譲渡です。 2009年06月07日: ■舞ちゃん帰ってきました。 2009年05月28日: ■しっぽくん、お試し入りました。 2009年05月24日: ■寧ちゃん、クロチビお試しに入りました 2009年05月22日: ■りゅうくん、じぇんとるくんの旅立ち 2009年05月18日: ●茶虎~ずとクロちゃんとママの寧ちゃんの状況 2009年05月16日: ■Mさんちの親子猫ちゃん☆里親様募集中 2009年05月15日: ■茶虎~ずの成長! 2009年05月07日: ■茶虎~ず、お見合いと近況 2009年05月01日: ■舞ちゃん、お試し入りました。 2009年04月27日: ■久しぶりです。 2009年04月24日: ■親子猫ちゃん達に、会ってきました。 2009年04月22日: ●茶虎~ずの様子(4/20) 2009年04月20日: ●新米ママ、子育てしています 2009年04月17日: ■もう一頭の子、無事保護しました。 2009年04月14日: ■黒猫ちゃん、お試し予定入りました! 2009年04月11日: ■親子猫ちゃん達の保護経緯ご報告 2009年04月10日: ★緊急★里親募集中 2009年04月10日: ■乳飲み子4頭 里親募集中
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3248.html
前ページ次ページゼロの使い魔ももえサイズ 「うえ~ん!!! びえ~ん!!! うわあああああん!!!」 翌朝、ルイズはベッドの上でおいおいと泣いていた。 「なんで!? なんで私がこんな目に遭わなきゃいけなかったのよ!」 ルイズは泣き喚きながらももえの胸をぽかぽかと叩く。 原因はあの時のネギである。はじめ、ルイズは頭が呆けていてよくわかっていなかったのだが翌日、下腹部から血が出ているのを見た途端にルイズは青ざめた。 「まあまあ、処女膜なんて新体操をやってる人は練習中に突き破っちゃうぐらい軟い物らしいし」 「新体操って何よ! それに全然フォローになってないわよぉ!」 殴り疲れたルイズはまたえんえんと泣き始めた。これにはキュルケもタバサもももえもなす術がない。 「だいたいあんたがネギをあんなところに突き刺すからこんなことになったんじゃないのよぉ! 無機物にバージンを奪われるなんて……うっ、うわああああああんんんん!!!!」 ルイズはベッドをドコドコと叩きながら泣き喚き続ける。 「………じゃあ、後ろ…は…これで…」 メイドのメイが取り出したのはルイズが持っていた杖だった。 「いいいいい、そっ、そんな太くて硬いので逞しいので貫かれたら大変なことになるじゃない!」 それを聞いたメイは残念そうにその杖を自らの懐にしまった。 「………ってそれ、私の杖じゃないのよ! あんた何勝手に自分のものに……ってあれ?」 「…ようやく…泣き…止んで…くれ…まし…た…。」 そう言って、メイはルイズにあっさりと杖を返したのであった。 「あっ、ありがと……。」 ルイズがこの館に来て初めて口にした感謝の言葉であった。 有馬記念で四位と武に殺意を抱いたあなたに贈る「ゼロの使い魔死神ガーゴイル友情タバサの裏設定タバサの母フレイムデルフリンガーシルフィードネギ香水下級生ももえサイズ」 落ち着きを取り戻したルイズは朝食を取ると杖を持って誰もいない裏庭へと向かった。 空は昨日とはうってかわって快晴である。太陽の光が眩しいくらいだ。 だからこそルイズは誰もいない日陰を求めて裏庭へとやってきたのだ。 杖を掲げたルイズは目の前にある大木に向かって呪文を唱える。 「メラゾーマ!」 そう言うと、杖は急激に光を帯びて周りを包み込む。そして……… ちゅどーん 見事杖は暴発を起こし、爆発した。 「もう、全然駄目じゃないのよ! この前は大きな炎を上げることができたのにぃ!」 確かに周りは爆風でめちゃくちゃになっていたのだが、自分自身はなぜか無傷という事実の重要性にルイズはまだ気づいていない。 その後ルイズは、イオ・ヒャダルコ・ザラキーマ等々の呪文を唱えてみるものの結果は同じだった。 「なんでっ…! どうして……っ!!」 ルイズは悔しさのあまり地面をドンドンと叩いた。 繰り返すがルイズの半径数メートルは爆風でぼろぼろになっているのに、ルイズは全くの無傷である。 「そうだ…。これは、杖……うん、この杖が悪いのよ! ダンジョンの中では、他の杖使ってたし。うん!」 ルイズはそう結論付けた。 「あっ、でも………。」 しかし、ルイズは思い直す。さっき使った魔法はダンジョン内でよく使ってた魔法だけだ。ひょっとしたら他の魔法は使えるかもしれない。 「だめもとでしてみようかしら………」 そうつぶやきながら、ルイズは目の前の大木に向かって杖を構える。 「はああああああああああっ!!!」 ルイズは精神を集中させ、そのすべてを指先に注ぎ込む。そして杖が光りだす。 「ファイアーボール!」 そう唱えた瞬間、光が丸くて大きな炎へと変わってルイズの杖先から発射される。そして、目の前の大木がそれをもろに受けて爆発した。 「………できた。 私、できたっ! できたぁーーーーっ!!!」 しばし呆然としていたルイズだったが実感がわくと、飛び上がらんばかりに喜びを表現した。 「いやっほう! 私はもう"ゼロのルイズ"なんかじゃない! 魔法が使える! 使えるんだー!だー!だー!」 ルイズは拳を何度も振り上げて喜びまわる。さっきまで物のせいにして落ち込んでいた人物とは思えないぐらいのはしゃぎっぷりだ。 「おーすごい、そのファイアーボールってなんかかっこいいね。」 すると、影から見ていたももえが手を叩いてルイズのことをこう褒め称えた。 「さすが私の見込んだ使い魔だねっ!」 「………えっ?」 ルイズは突然の言動に頭が真っ白になりつつも状況を冷静に整理しようとした。 「っていうか私がご主人様であんたが使い魔よね? 間違ってないわよね?」 「じゃあ証拠見せてよ。」 対するももえは気だるそうにそう言った。まるで自分が主人で使い魔の反抗をあしらっているかのようだ。 「しょ、証拠ってあんた……だいたいあんたには体に紋章が 「だって私あんたより強いし。」 「いや、強い弱いとか関係ないから。だいたい、私は貴族なのよ、わかる?」 ルイズは無い胸を張って自分が貴族であることを強調する。 「そう、私は誇り高きヴァリエール家の三女。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールなのよ! あなたは使い魔なんだから私に平伏しなさい!」 ルイズは自分でしゃべりながらテンションが上昇していた。そしてそれにももえが追い討ちを掛けるかのように 「ルイ…ルイ…ルイボスゴールド?」 「ルイしかあってないじゃのよ! あんたいい加減に私の名前を覚えなさいよ!」 ルイズはももえのせいで完全に頭に血が上っていた。さっきまで長年の目標を達成して喜びの境地に達した人物とは思えないぐらいの苛立ちっぷりだ。まあ原因はももえにあるのだが 怒りのあまり、ルイズはがしっと目の前の肩に掴み掛かる。ももえの肩は肩代わりされている死神の手がついているのだがそんな事はお構い無しに、がくがくと上下に揺らす。 「だいたいあんたここに来てから使い魔らしい事何一つしてないじゃないのよぉっ!」 「え~~~~~だってぇ~~~~~わたしも下僕とかぁ~~~~はべらせたいしぃ~~~~~だいたいあんたのいう使い魔ってぇ~~~~ どうせ下着とか洗わせてぇ~~~食事とかでわざと屈辱的なことをさせてぇ~~~~キレたら鞭とかで叩いたりするんでしょぉ~~~~~~」 ももえが突然こんなしゃべりになっているのはルイズががくがくと揺らしているので首も上下にがくがく揺れているからである。 「わっ、私をなんだと思ってるのよ!」 と聞かれたももえは即答で、 「ロリツンデレピンク髪。あとぺたんこ」 ぶちっとルイズのどこかが切れた音がした。ルイズは顔を真っ赤にさせてあらん限りの力を込めてももえを突き飛ばす。 「うるさいうるさいうるさい! 属性で私を表現するなぁーーー!!!!」 怒り狂ったルイズがももえに杖を構えたその瞬間――― 「頭に乗るな小娘。」 凍てつくような声によりはっと我に返ったルイズは、恐る恐る声のした方を振り返ってみるとそこには水兵服を着た女性がいた。 「あっ、あなたは確かももえのお母さんの……もごもご 「おっと、ももえの母親についての話はそこまでだ。」 水兵服姿の女性はすかさずルイズの口に封をする。しばしルイズは腕やら身体をもがきながら暴れていたがそれも収まってルイズはその場に崩れ落ちた。 彼女はようやくルイズの口から手を離した。 「じゃ、じゃああなたの名は…」 「ふっ、よくぞ聞いてくれた。」 ルイズが崩れ落ちたままなのを気にすることなく彼女はこう宣言した。 「ある時はドクター、ある時は鍋奉行、またある時は時の神。話が変われば職も変わる。 その名は"流しの悪魔"!」 流しの悪魔と名乗った彼女はそう言って颯爽とポーズを決める。 すると今まで様子を見ていたももえが彼女に話しかけてきた。 「流しの悪魔さん、私たちに何か用ですか?」 「ああ、お前達が勝負事をはじめようとしているのを見てたらいてもたってもいられなくなってな。」 「えっ? 反応それだけ!? っていうかもうちょっと驚くなり何なりしたらどうなのよ! 私はこいつに口を押さえられてきいずみ行きの馬車に乗せられてどっかへ行こうとしていたのよ! だいたいこの人はあんたの 「よくぞ聞いてくれたっ!」 いつの間にか復活したルイズの話を完璧に無視した流しの悪魔は、今回の目的について説明し始めた。 「今回は流しの悪魔立会人! お前達の勝負私がしかと立会いして見せようではないか!」 おー。とももえは手をぱちぱちさせている。ルイズはももえに貶され、流しの悪魔に殺されかけてますます機嫌が悪くなっていく。 「ところでお前達。さっきまでどちらが強いかについて争っていたのだな?」 ルイズとももえは頷いた。すると、流しの悪魔は 「どちらが強いかなどと争うことは不毛極まりない!」 そう怒鳴ると流しの悪魔がその場で大きく足踏みをする。 すると地面がわずかながらに隆起し、ルイズのいた場所はわずかに地割れしているではないか。ルイズは戦慄した。 「いいか、逆に考えるのだよ。"どちらが主人にふさわしいのか"ではなく"どちらが使い魔にふさわしいのか"と」 「という訳で」 流しの悪魔のその宣言によって急遽はじまった、ももえとルイズのタイマン勝負。 「第1回チキチキ使い魔三本勝負~~~~~!!!!」 ギャラリーは多ければ多いほど良いという理由で呼び出された、死神家一同とキュルケとタバサもいた。 彼女らは焼け野原の上に線を引いただけの特設ステージの外から二人の様子を見守る事にした。 「やるからには勝って上下関係をはっきりとつけさせてもらうわよ。モモエ」 「それはこっちの台詞だね、ルイズちゃん。」 顔を見合わせて火花を散らせる両者。キュルケとタバサはいまいち状況が飲み込めない様子で二人とも顔を見合わせるしかなかった。 「端的に言いますとももえお嬢様の挑発にルイズさんがまんまと乗ってしまわれたのであります。」 「はあ………」 キュルケは唖然としながらも博士の話を聞いていた。すると、メイやヒルから横槍が入れられる。 「……でも、…ルイズ…さん…は……、…とても…いい…人だ…と…思いま…す」 「ああ、俺もそう思うな。あそこまでお嬢さんの行動に対してノリノリの奴なんてそうはいないからな。」 「そうなんだ………。」 オクタイ君やケモンもうんうんと頷いているのを見るとどうやらルイズは、死神家の使い魔たちからは良い印象をもたれているようだった。 「ただ、肝心のお母様がねえ………」 キュルケは流しの悪魔のほうを向いて小さくため息をついた。 「私にもわからない………。」 タバサもそう呟いた。流しの悪魔が時折向けるルイズに対する鋭い視線がタバサにとって気がかりであった。 そして流しの悪魔からまだ明かされていなかったルールについて言い渡される。 「使い魔というのは、感覚の共有、秘薬の捜索、主人の護衛。大きく分けて3つあるのだが………」 ルイズとももえがごくりと息を呑む。 「今回はそんな非現実的なことはしない。なのでかわりに家来、下僕、パシリ。この3つの称号をかけて争い、より多くのポイントをゲットしたものを勝者とする。」 「………はぁ?」 「では、そう決まったところで"家来"の称号を得るための第一勝負についてだが………」 「ちょ、ちょっと! あんたいい加減にしなさいよ! なんど私を無視すれば気が済むの………って、痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!! みっ、耳は引っ張らないでぇ!!! 痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!」 「すでに勝負は始まっている。油断するな、小娘」 流しの悪魔は無表情のままルイズの右耳を引っ張っていた。ルイズの耳がだんだん赤く腫れ上がっていくのがわかる。 「おー、二人とも楽しそうにじゃれあってるねえ」 「これのどこがじゃれあってるように見えるのよぉ!」 ルイズは涙目になりながらそう叫んだ。 「仕方ないなぁ………何とかしてほしい?」 ルイズは首を激しく縦に動かす。そして、それを見たももえはカマを取り出してルイズの耳元に構える。 「じゃあ…それごとルイズの耳を切断……」 「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!!」 「大丈夫、大丈夫 盲目の人でも皇帝暗殺をしようとした元気な人もいるから。だから耳ぐらいどうってことないって」 ???ものしり館??? 高漸離【こうぜんり】 中国戦国時代の人物。秦王(始皇帝)の刺客として有名な荊軻の親友である。 荊軻の復讐を目論んだ高漸離は筑の才能を生かして名前を隠して秦王に使えていた。 後に高漸離の目論みは秦王に露見したのだが、才能を惜しんだ秦王は高漸離の目を潰してそのまま仕えさせた。 高漸離は筑を投げつけて秦王を殺そうとしたが、盲目だったため外れて謀殺された。 「いやいやいやいや 目と耳じゃ全然違うから。だいたい皇帝暗殺しようとした人って元気って呼べる人なの? っていうかどうでもいいからこの手を離し…痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!!! ちぎれるっ、ちぎれるっ、ちぎれるううううううううう!!!!」 すると、流しの悪魔はようやくルイズの耳から手を離した。ようやく解放されたルイズは肩で息をし、耳は真っ赤に腫れ上がっていた。 「はぁ………はぁ………はぁ………死ぬかと思ったわ。」 「死ぬかと思ったなどと言ってる内は決して死にはしないから安心しろ」 そんな二人を回避して傍から見ているももえ。 「…………」 「…………」 流しの悪魔とルイズが戯れているのをよそにタバサは思っていた疑問をももえにぶつけた。 「これって勝負に勝った方が使い魔になるんじゃ………」 「ううん。そんな事無いよ。だからわざと負けるとかそんな卑怯な真似はしないからね。」 ももえは笑顔でそう答えた。そして、その直後にさらっとこんな言葉を吐き捨てた。 「負けたらそれ以下だからね。」 「……以下なの?」 「うん、以下。」 そうこうしているうちに流しの悪魔からこんな一言が飛び込んだ。 「下僕部門 勝者 ももえ」 「……えっ、でもモモエは何も………。」 「耳をつねられて"気持ち良い"の一言も言えないようじゃ下僕失格だ。」 流しの悪魔はそのように説明する。 「あんたは大丈夫なの?」 「うん、私悪魔の体だから!」 「…………もう私の負けでいいわ…。」 能天気に答えるももえにルイズはがっくりと肩を落としたのであった。 「続いて家来勝負を行う」 そう言われて二人はももえの屋敷の中に案内される。 流しの悪魔は手馴れた様子で二人を先導した。ギャラリーもそれに付いて移動する。 「普通に迷わず通れば何事も無い家だ。しかし………」 流しの悪魔は傍らにある扉を開けた。すると――― 「なっ、何よこれ!」 ルイズが驚くのも無理は無い。そこには今までいた家とは違う空間を形成した吹雪いている一室があったのだから。 「なんだ、お前は雪は見たことが無いのか?」 「それぐらい見たことあるわよぉ! だけどこんな脈略もなく雪を見たのは初めてだから………」 耳の件があったのでどうしても強く責め立てる事が出来ないルイズ。流しの悪魔は二人にあるものを渡した。 「これは………?」 「草鞋だ」 流しの悪魔が渡したのは草鞋だった。ルイズははじめてみるそれをまじまじと見ている。 「これを見るのははじめてか?」 「うん。教科書の写真で見たことはあるけど実物を見るのははじめてかな。」 流しの悪魔はにやりと笑う。早速二人に指令を言い渡す。 「それを二人に人肌で暖めてもらう」 「「えっ………?」」 「その草鞋をどれだけ暖かくすることが出来るか。より暖かくしたほうが勝者だ。 制限時間は1時間。なお、ホッ○イロとかそういう物を使うのは禁止とする。」 そう言って流しの悪魔はももえが隠し持っていたホッ○イロを取り上げる。 不服そうなももえをよそにルイズは手に持った草鞋を注意深く観察していた。 「では、はじめっ!」 流しの悪魔が笛を吹いた瞬間、二人はオクタイ君によって部屋の中に放り出された。そして外から鍵がかけられる。 「ちなみに二人の様子は別室でモニタリングしております。」 部屋のどこかにあるスピーカーから流しの悪魔の声が聞こえてきた。 「じゃあ、私たちは休憩しながら見るから適当にがんばってくれ。 うどん食べる人ー!」 はーい!という威勢のいい声がスピーカーから聞こえてくる。頭にきたルイズは、手にした草鞋を声のする方向へ力いっぱい投げつけた。 ブチ!………ジジジジジ……… 「ナイスコントロール!」 ももえは右親指を立ててそう言った。ルイズもそれを真似してみる。そして、ルイズは壊れかけのカメラとスピーカーを完全に壊す作業に取り掛かった。 「寒い………」 不自然なまでに強くて冷たい風がルイズの身体をたたきつける。 「あんたは平気なの?」 ルイズは、こんなに寒いのに肩出し、へそ出しと露出しているのにもかかわらず平気そうにしているももえを見てそう言った。 「うん、私悪魔の身体だし。寒さとか熱さとかそういうのは平気だから」 「へぇ…………」 しかし、問題はこの草鞋だ。この草鞋をどの様にして温めるのか。ルイズは懐に入れていた草鞋を取り出してみる。 「全然暖かくない………」 元々冷え切っている草鞋をこの寒さで冷え切った身体で暖めるのは無理な話だ。ルイズが草鞋を外気に晒しているうちにどんどん草鞋に雪が積もってくる。 「うーん………」 ルイズは積もってくる雪を払いながら必死に考えていた。髪にも雪が降っているのだがそんなことを気にする余裕が無かった。 「うーん………」 困っているのはももえも同じだった。ももえ自身の体温調節は問題ないのだが、ももえの着ている服では草鞋を入れて暖められるようなスペースは無い。 「「あっ」」 二人同時に何かをひらめいたようだ。二人は草鞋をある場所に仕舞う。 吹雪が激しさを増し、腰の辺りまで雪が積もってきてはいたが、二人はゆっくりと活動を停止していった。 「………イズ、ルイズ!」 「あ………キュル…ケ?」 ルイズが目を覚ますとそこには雪が一面に広がっていた。キュルケ達は防寒着に身を包み、同じく雪に埋もれていたももえはタバサに救出されていた。 「よかった………!」 キュルケは思わずルイズを強く抱きしめる。 「大丈夫? 苦しくない?」 「くっ、苦しい………。」 キュルケの胸に挟まれたルイズは息苦しそうに足をジタバタとさせる。 「大丈夫………?」 「あー、うん。私は平気」 タバサに抱きかかえられたももえもそう答えた。こっちは比較的元気そうだ。 「ところで、草鞋はどうしたのだ?」 流しの悪魔がそう言うと、ももえは胸の谷間から草鞋を取り出した。 「はいっ」 雪のせいで部屋の室温が冷え切ってる中でももえの草鞋はほかほかと湯気を漂わせている。 「なるほど………服の表面積の圧倒的な少なさから言ってももえが不利になると思っていたのだが………よくやったな。」 流しの悪魔はももえのアイデアにいたく感心していた。 「では、ルイズの方だな。」 そう言うと、皆がルイズのほうに注目する。 「ルイズ、お前は草鞋をどこで暖めたのだ?」 「えっ」 それを問われたルイズはまたたくまに顔が紅潮し、目が泳ぎ始めた。 「えっ、えっと……草鞋は………その…」 「わしならここにおる!」 「我もここにいるぞ!」 どこからともなく甲高い男の声が聞こえてきた。ももえ達も辺りを見渡す。しかし、ルイズの顔は見る見るうちに青ざめていた。 「ま、まさか……ひょっとして…いやああああああああっ!!!」 ルイズの叫び声とともに草鞋がルイズの背中から飛び出てきた。 その草鞋もほかほかと湯気を漂わせており、暖まっているのがわかる。しかしその湯気は暖まったというより草鞋の怒りによるものだと思えて仕方が無かった。 「誇り高き、我が草鞋を尻に敷くなどの粗末な扱いをしたのはどこのどいつだ!」 「その通りじゃ! 物の正しい使い方を知らぬ小娘め! わしらを馬鹿にすると痛い目にあうぞ!」 「えっ、えっ、ええええっ!?」 「あー………ルイズちゃん、草鞋をお尻に敷いちゃったんだ。」 二足の草鞋がしゃべっているこの状況に戸惑いまくるルイズに対し、ももえは両手を開いてやれやれといった表情を作る。 「草鞋を尻に敷くなんて御法度なんだよ。この草鞋は人の足に履かれるのを喜ぶんだけど尻にしかれるとむちゃくちゃ怒るんだよ。」 「ええーーっ!!!」 「その通りじゃ! 草鞋は尻に敷くものではないのじゃ!尻に敷かれるのは女房だけで十分なのじゃ! こりごりなのじゃ! こりごりなのじゃ!」 「我も同じ意見である! 胸に挟むならまだしも尻に敷くとは言語道断! 全く、貧乳娘の発想の貧困さには困ったものである!」 草鞋はそう言いながらルイズの頭を執拗に叩き付ける。すっかり雪がやんだ部屋はパーンパーンと無駄に軽快な音とルイズが徐々に鬱陶しそうになる声で支配されていた。 「あっ、あの………草鞋さんもそれぐらいで………」 珍しくももえが仲裁に入ろうとする。しかし、興奮状態の草鞋の片割れは勢いあまってももえの頭にも軽快に叩きを食らわせる。 スパーン……ズバッ 一瞬の出来事であった。草鞋の片割れがももえの頭に叩きつけた瞬間、ももえは手にしていたカマを軽く振りかぶる。 草鞋の片割れは見事に真っ二つに割れて、ぽとりと地面に落ちてそのまま動かなくなった。 『ももえのカマで斬られた物の存在はももえが肩代わり』 「ひいっ!」 恐れをなした草鞋は一目散に逃げてしまおうと試みた。しかし、逃げようとした草鞋をルイズは左手でがっちりと掴んでいる。中指の爪は草鞋に食い込みかけていた。 「あっ、あのっ、そのっ………」 さっきとは一転して弱気になっている草鞋。ルイズは右手に持っている杖を草鞋にこすり付けた。 「あんたね………誇り高きヴァリエール家の三女である私の尻に敷かれる事がどれだけ価値があって、どれだけ需要があるのかわかってないわね。」 ルイズは冷静な口調で草鞋に語りかける。何百年も女の尻に敷かれ続けた草鞋にはそれが並々ならぬ怒りを表現していることは十分にわかっていた。 「だから………私が焼いてあげるわ」 「ひいいいいいいっ!!!!!」 草鞋は思わず悲鳴を上げた。それに構わずルイズの杖は光りだす。そして呪文は詠唱された。 「ファイアーボーォォォォォォォォル!!!!!」 刹那、大きな光に包まれた玉が至近距離で発射され、草鞋を直撃する。草鞋は断末魔の声を上げることなく爆発した。 しかし、このルイズの渾身の呪文は部屋にいるルイズ以外の人物・物を黒焦げにしてしまったのであった。 「で、使い魔勝負はどうなったの?」 とりあえず風呂に入ってさっぱりした一同は、死神家の大広間に集っていた。メイからフルーツ牛乳が振舞われそれを飲みながらももえは流しの悪魔に質問した。 「ああ、その件についてだが…………。」 皆の視線が流しの悪魔に集まる。 「とりあえず家来勝負はももえの勝ちだ。」 「えっ………でも、私ちゃんと暖めて 「いくら説明不足とはいえ、尻に草鞋を敷くのはマナー違反だぞ、ルの字 尻に敷かれたホカホカの草鞋を欲しがるのは特殊な趣向をもった大きなお友達しかおらん」 「はい………」 色々と突っ込みたいところはあったがそれに突っ込むのは危険だと察したルイズは何も言うことができなかった。 「ちなみにパシリ勝負は大きなしゃもじをもってガリア王国の王宮に進入して、イザベラ皇女と激戦の末に晩御飯をご馳走になる……なんて事を作者は考えてたらしいぞ」 「馬鹿じゃないの!?」 思わず、キュルケからの突っ込みが入った。 「じゃあ結局私がモモエの使い魔になるのね………全然釈然としないけど。」 どこか諦めの混じった声でルイズはため息をつく。しかし、 「あっ、じゃあ私が代わり使い魔になってあげようか?」 「えっ、いいの?」 ももえの突然の提案にルイズはすぐさま食いついた。 「その代わり私にも条件があるんだけど………ルイズちゃんのこと『スレイヴ』って呼んでもいい?」 「スレイヴ?」 「うん、スレイヴ。ご主人様に変わる新しい呼び名だよ。」 ももえはさわやかな笑顔でそう言った。ルイズもその呼び名が気に入ったらしく『スレイヴ』と何度も口の中で呟き続ける。 「いいわよ。いいわよ。あんたが使い魔で私がスレイヴ あー、なんか私のほうがなんかカッコイイ感じじゃない? あっはっはっはっはっはっ」 「あっはっはっはっはっはっ」 よほど嬉しかったのかルイズの高笑いは止まるところを知らなかった。 しかし、ももえの本当の意図に気づいたタバサは思わず口を開く。 「でも、スレイヴって確かど………もごもごもごもごもごもご」 「……知らぬが……仏……です…。」 メイはタバサの口を押さえつけながらそう呟いたのであった。 ※おわり これまでのご愛読 ご支援ありがとうございました ※次回からはじまる「ゼロの使い魔死神ガーゴイル友情タバサの裏設定タバサの母フレイムデルフリンガーシルフィードネギ香水草鞋下級生ももえサイズ」に乞うご期待! 前ページ次ページゼロの使い魔ももえサイズ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8913.html
前ページ次ページルイズと無重力巫女さん トリステイン王国の中心部であるトリスタニアは規模こそ小さいながらも、かなりの人口が密集している場所だ。 大小様々な通りや路地裏といった街の中は勿論、劇場に役所などの公共施設にもうんざりするほどの人がいる。 古めかしい印象漂う旧市街地には浮浪者や貧困層の平民が今も暮らしており、未だ人の住みかとしての役目を続けていた。 街の地下を通る水道なども家を持てない連中の巣窟となっており、逆に人のいない場所を探せというのが困難だろう。 ある程度差はあるが、人という種の生物は生まれた時から他者と寄り添って暮らすものだ。 自分は一人でも大丈夫だと言い切る者も、無意識的に人のいるところへ近づいてしまう。 中には俗世を捨てた坊さんの様に一人寂しく山奥で暮らすような者たちもいるが、それはほんの少数。 人間は他の生物と比べ個々の力は弱いものの、群れるとなればその本領を発揮する。 数多の文明を作り上げてきた手足を使い、敵対する相手を打ちのめす武器を作り上げる。 相手に勝利した後はその頭脳をもって歴史を作り上げ、後世の子孫たちにそれを言い聞かせて生活圏を拡大していく。 そうやって安寧の地を作り上げてきた人々は、互いに寄り添う事は大事なのだと無意識に理解しているのだ。 しかし…。それは決して、お互いを支え合って暮らしているという事ではない。 ◆ チクトンネ街にある自然公園。 夜には昼の倍に活気づくこの街の中央から少し離れた場所に、そこはあった。 今から二十年前、街の中にもっと自然を入れようという考えから生まれたこの公園には今日も大勢の人が訪れている。 国中の庭師や建築家達を招集してて作られたここは、正に人工の森と言っても良いだろう。 散歩道に沿って植えられた木々が初夏の日差しを遮り、歩いている人々を僅かながらにも涼ませている。 規模を比べればブルドンネ街にある公園よりも小さいものの、中央には池が作られている。 そこにはカエルやメダカといった小さなものから、タニア鯉やサンショウウオといった大きな水生生物たちが暮らしていた。 池の周りには囲うようにしてベンチを設置しているほか、貴族専用の休憩小屋まで建てられている。 水のあるところには必ず人が来ると予想してか、公園の中にはアイスクリームや軽食などの屋台まである。 少なくとも街中の噴水広場より大きく開放感のある場所の為か、今日はいつにも増して公園を訪れる人が多い。 平民や貴族といった事は抜きにして家族やカップルに従者を連れた者から、一人で来ている者まで様々だ。 そんな池の周りに設置されたベンチの一つに、黒髪の少女が座っていた。シエスタである。 魔法学院で給士として奉公している彼女は、若草色のスカートに半袖のブラウスといったラフな出で立ちをしている。 溜まっていた休暇を使って午前から街へ遊びに来た彼女は、従妹と一緒にこの公園を訪れていた。 最も。シエスタが従妹と出会ったのは偶然であり、彼女の家が何をしているのかも知っていたのでその時に軽く驚いたのだが。 従妹はチクトンネ街の方で叔父と一緒に夜間営業の店を開いているので、朝と昼の時間は寝ている筈なのだ。 寝なければ夜の仕事に影響が出るであろうし、何よりも寝不足というのは女性にとって大敵そのもの。 それを知らない従妹ではなく一体どういう事かとシエスタが聞いたとき、自分も今日は休みだと彼女は教えてくれた。 「ここ最近は忙しかったからね、久しぶりにアンタと会えるなんてこっちも嬉しい所さ」 店の看板娘と誇れる綺麗な顔に微笑を浮かべて、彼女はそんな事を言ってくれた。 そんなこんなでお遅めの昼食をとった後、折角だからとこの公園に来て三十分程が経過して今に至る。 何か飲み物を買ってくると言った従妹と一時別れたシエスタは初夏の暑さを肌で感じつつ、従妹が帰ってくるのを待っていた。 燦々と大地を照らす太陽の光と熱が彼女の身体を炙り、平民にしてはやや綺麗な肌からは玉のような汗が滲み出る。 それをハンカチで拭いつつ一体いつになったら帰ってくるのかと思った時、うなじの部分から何か違和感の様なものを感じ取った。 暑い空気が漂うこの場所で、その違和感が何なのかすぐに分かったシエスタが後ろを振り向いた瞬間… 「きゃっ…冷たっ!」 冷たい結露を滲ませた瓶が頬に当たり、彼女は小さな悲鳴を上げた。 直後、その紙コップを持っていた人物がその顔の筋肉を緩ませて笑い始める。 「ハハッ、ドッキリ大成功だ!」 まるで落とし穴にはまった阿呆を笑い飛ばすかのようにシエスタの従妹、ジェシカは言った。 貴重な休暇の真っ最中である彼女の服装はシエスタと同じく、この季節に合わせて涼しげな印象がある。 白い木綿のシャツは体より少し大きめではあるが、胸が大きいせいかブカブカしてはいない。 それどころか、彼女の長所の内一つであるそれを周りにこれでもかとアピールしていた。 無論路地裏にいるような娼婦ほど下品ではなく、いつも仕事で着ている服と比べればまだまだ控えめ程度なのだが。 「もう…真昼間だからって驚かさないでよ」 「イヤァ~悪い悪い、ちょっと戻ってくる途中に魔が差しちゃってね?…っあ、はいコレ」 シエスタの苦言を軽い言葉と共に聞き流しながら、ジェシカは右手に持っていたアイスティーが入った瓶を手渡した。 全く反省の色を見せない彼女にシエスタは小さなため息を突きつつ、それを受け取る。 従姉が受け取ったのを確認してからジェシカも彼女の隣に座り、瓶の中に入っている炭酸飲料を飲み始めた。 普通の物よりやや大きい瓶の中に入っているオレンジソーダは小さく波打ちながら、ゆっくりと彼女の喉を通っていく。 一方のシエスタは彼女と違いすぐにアイスティーを飲もうとはせず、申し訳なさそうにその口を開いた。 「…ありがとうジェシカ。お昼ご飯だけじゃなくてわざわざジュースも奢ってくれるなんて」 「う…ひぃって、ひぃって!ふぇつにふぃにひなふてほ」(う…良いって、良いって!別に気にしなくても) 突然従姉からお礼を言われたことに、ジェシカは瓶を口に着けたまま言葉を返す。 しかし何を言っているのかわからないうえ行儀の悪い従妹の素行に、シエスタはついついその表情を曇らせてしまう。 シエスタの顔色を見てすぐに察したのか、ジェシカは少しだけ慌てたように口から瓶を離した。 「もう…貴女って子供の頃からそうよね」 呆れたような従姉の言葉に、ジェシカは「ヘヘへ…」と照れ隠すように笑う。 「自分はお行儀よく生きてるつもりなんだけどねぇ。…何て言うかな、育ちが違うってヤツ?」 先程と同じく反省していない様子の従妹にシエスタはまたもため息をつきつつ、ようやくアイスティーを飲み始める。 つい数分前まで氷水に浸かったおかげでキンキンに冷えた瓶の中身が、彼女の口内を刺激していく。 少し過剰とも思える程度に冷たいアイスティーの味と香りをじっくりと堪能しつつ、それを喉に通らせていく。 それから二口分ほど飲んで口から瓶を離し、シエスタはふぅ…と一息ついた。 彼女の口から出たそれは飲む直前のため息とは違い、生き返ったと言いたげな雰囲気が込められている。 「……美味しいね。冷たくて」 「でしょ?」 従姉の口から出た感想に、従妹は満面の笑みを浮かべた。 それは、二人の大事な休日の一シーン。 細かくすれば、公園の中で起こっている様々なイベントの一つ。 もっと遠くから見れば、チクトンネ街の中で起こった些細とも呼べぬ出来事。 そして空の上から見下ろせば…トリスタニアに住んでいる何万人もの平民たちの内、たった二人の会話。 誰かの目には入るかもしれないが、永遠に記憶されないであろうその会話。 しかし二人にとっては、青春時代の思い出に刻まれるであろう大切な一時なるのだ。 まるで制限時間付きの魔法を掛けられたお姫様のように、二人は残された午後の時間を楽しむだろう。 人という生物は群れる事によって強固な都市を作り、世代を重ねて平和を謳歌する。 ここにいれば安全に生きていけるし、外敵に怯える夜を過ごさなくても良い。 だから忘れてしまった。自分たちを脅かす要素が内側からも発生するであろうことに。 自然公園からもう少し北の方へ進むと、小さな林が広がっている。 かつて旧市街地の遊歩道兼小さな公園として作られたここは、今や誰も訪れぬ場所となっていた。 人の手と自然の力によって作られたここは死んだように静まり返っており、遠くの方からは街の喧騒が聞こえてくる。 まるで墓地のような雰囲気を漂わせるこの場所には、唄を囀る小鳥もいなければ野を駆ける動物たちもいない。 そこから進んだところにある樹海の入り口とここを隔てるように設置された錆びた鉄柵の所為で、外の世界から来る者がいないのだ。 風に吹かれてなびいた木々が自然の音楽を奏でてはいるが、それがかえってこの場所を不気味にしている。 碌に整備されず好き放題に伸びた雑草が荒廃した雰囲気を作り、遠くから聞こえてくる明るい喧騒が空しさを駆り立てる。 まるでここは箱庭。ただ砂の地面に木や芝生の置物だけを設置して構成された空虚な世界。 普通の神経を持った人間ならば、すぐにでもここを離れて人気のある場所へと走るだろう。 それは常識的に最も正しい答えであり、大衆が賛同する模範的解答例に違いない。 しかし――――゛少女゛は好きであった。人気のないこの小さな世界が。 誰もが忘却してしまった朽ちた箱庭のような此処が、なんとなく好きになってしまったのである。 「……………」 一見すればボロ布と勘違いされるであろう黒いローブを羽織った゛少女゛は何も言わず、ただじっと空を見上げていた。 枝と木の葉が擦れる音を耳に入れつつ、゛少女゛は雲が緩やかに流れていく光景を目に焼き付けている。 朝方と比べ幾分か冷たくなった初夏の風が特徴的な少女の黒髪と、後頭部に着けた赤いリボンをフワフワと揺らす。 まるで鱗翅目の中で中々麗しい容姿を持つ蝶のような形をした赤色のリボンは、この場所で最も目立つ色をしていた。 腰ほどまで伸びた黒い髪は陽の陽の光に当たり、艶やかに輝いている。 肌の色はハルケギニアに住む人間と比べると若干黄色が混じってはいるが、近くで見なければまずわからないだろう。 無表情ではあるが顔の方も均整がとれていて文句は無い。正に花すら恥じらうという言葉が似合う程。 ここまで言えば容姿端麗の美少女なのだが。唯一意義を唱えるべき個所が一つだけあった。 ゛目゛だ。 ゛少女゛の眼窩に嵌っている、二つの球体状のそれ。 赤みがかった黒い両目は確かに美しいものの、どこか虚ろな雰囲気があった。 まるで路地裏に暮らす孤児のように、何かを悟り諦めてしまったかのような絶望感。 生きていく希望や理由すら失い、生ごみでも食んで毎日を無作為に過ごしていくような虚無感。 まともな人生を歩んでいる人間が浮かべる事の出来ないようなそれが、その両目から惜しみなく滲み出ている。 きっと゛少女゛がその両目で睨めば多くの人間が怯み、自ずと消え失せていくであろう。 しかし、゛少女゛はそれでも良いと思っていた。他人の為に気を使うならば、ずっと一人でいる方が気楽だと。 だから好きになれたのかもしれない。自分と同じように、誰からも愛されなくなったこの場所を。 「………」 空を見上げていた゛少女゛は、ふと何かを思い出したかのように頭を下ろす。 青と白の美しい景色から一転して目に映るのは、周りを囲むように生えている雑木林。 十年近くも前から手入れされなくなったこの場所は、夏が訪れようとしているのに薄ら寒い何かが漂っている。 かつて人から名前を貰ったこの土地も、多くの人々の記憶から忘れ去られた今では死に体も同然。 撤去されたベンチの埋め合わせで生えてきた雑草は少女の膝くらいの高さにまで伸びており、お世辞にも歩き易い場所ではない。 少し厚めの靴下を履かずに歩こうものなら、無駄に成長している草たちでその足を切ってしまうだろう。 幸いにも゛少女゛が今いる場所はそれほど成長しておらず、注意して歩けば怪我をすることはない。 しかし、゛少女゛はそんな理由で頭を下げたのではなかった。 頭を下ろした゛少女゛を囲むようにしてできている小さな雑木林。 リスやトカゲといった小動物はいないものの、きっとコガネムシやバッタなど昆虫たちの住処と化しているだろう。 雑木林にその身を囲まれている゛少女゛はその場から動くことなく、ゆっくりと周囲を見回し始めた。 まるで何かを探しているかのように、頭だけを動かして見回している。 顔色一つ変えずそのような事をしている゛少女゛の姿は、何処となく不気味な何かが漂っている。 やがて十秒ほど辺りを見回した時、突如゛少女゛の動きが止まった。 まるでリードを引っ張られた犬の様にその体をビクリと止めた゛少女゛の視線の先にあるのは無論、雑木林。 常人が一見すれば何の変哲もないであろうその林…否、その林の゛向こう゛から、゛少女゛は感じ取っていた。 自分をここまで連れてきた、゛怒り゛の根源であろう゛何か゛の気配を――――― ゛少女゛は目の前をじっと見据えたまま、思い出し始める。 なぜ自分がこんな場所へとやって来たのか、その理由と経緯を。 数時間前、゛少女゛をとある苦痛から助け出した゛怒り゛の感情がこんな事を教えてきた。 『お前は今から、ある場所へ行け』と。 ゛少女゛自身の心が、゛少女゛の体にそう命令したのである。 ゛少女゛はその指示に従って森の中を歩き、途中襲いかかってきた豚頭の怪物を葬ってここへ来た。 その時近くにいた二人の人間が襲いかかってきたのだが、その人たちがどうなったのか゛少女゛は良く知らない。 襲われた張本人である゛少女゛自身が覚えていないというのはどう考えてもおかしいが、本当に何も覚えていないのだ。 ただ。二人の内一人が何かを言ってきた時、自分の意識が混濁したことだけはハッキリと覚えていた。 何を言われたのかという事も覚えてはいないが、きっとその言葉は自分にとって一番言われたくない言葉だったのだろう。 もしもそうならば、むしろ思い出す必要は無いと決めて゛少女゛は考える事をやめた。 そうして何も考えずただ゛怒り゛の指示に従って歩き、今に至ってようやく゛少女゛は理解した。 ――――――゛怒り゛は、導いてくれたのかもれない。 自分を苛んでいた痛みの根源である、゛何か゛と会わせるために… その瞬間であった。 目の前の林から二つの小さくて薄い物体が飛び出してきたのは。 少なくとも亜高速の銃弾より遅いであろうそれはしかし、並大抵の人間の目では決して捉える事はできないだろう。 それ程の速度で迫ってくる二つの物体に対し゛少女゛は頭で考えるより先に体を動かし、咄嗟に左手を前に突き出す。 突き出したと同時に二つの物体と左手が見事衝突した瞬間、不思議な事が起こった。 何とその物体は、まるで糊が塗られているかのようにピッタリと゛少女゛の左手に貼りついたのである。 「あっ…――…えっ?」 一体何なのかと軽く驚きそうになった瞬間、そこで゛少女゛は気づく。 自分に目がけて飛び出してきた物体の正体が、二枚の紙であったことに。 長方形の白いそれには、赤い墨を使って文字か記号の様なものが書かれている。 それが目に入った瞬間、今まで無表情であった゛少女゛の目がカッと見開かれた。 ゛少女゛は知っていた。この紙に書かれている文字がどういう意味を示しているのか。 そして、これの直撃を喰らう事が非常に危険だという事だと。 直後、゛少女゛の左手に貼りついた二枚の紙がパッと一斉に光り輝く。 まるで信号弾のように青白いその光は、あっという間に彼女の体を包み込み―――――爆発した。 黒色火薬や系統魔法のどれとも違うそれは、本来はこの世界に無い力に包まれている。 それ程強くもない爆発だというのにそこから生まれた風は強く、地面の雑草を吹き飛ばし雑木林を激しく揺れ動かす。 地面の土が煙となって一斉に舞い上がり、爆発の中心にいた゛少女゛ごと周囲を包み込む。 爆発自体は一瞬であったものの、その一撃はあまりにも強かった。 しかも爆弾や魔法でもない、たった二枚の紙がそれを引き起こしたのである。 もしこの事を知らない人間に事情を話しても、すぐに有り得ないの一言でバッサリ切られてしまうだろう。 「――――――成る程。…こりゃまた、とんでもないのがやって来たわね」 辺り一帯が土ぼこれに包み込まれ、爆風の余波で今も揺れ動く林の木々。 先程とは一変してやかましくなったその場所へと、一人近づこうとしている゛彼女゛がいた。 爆発に巻き込まれた゛少女゛と同じ色の髪に同じ色とデザインの赤いリボンを頭に付けた、赤みがかった黒い瞳の゛彼女゛。 紅白の服と黄色のスカーフを身に着け、服とは別になっている白い袖を腕に着けている゛彼女゛の表情は不機嫌なものとなっている。 「まぁ、ここ最近は動きが無かったから充分休ませてもらったけど…」 ゛彼女゛は黒いローファーを履いた両足でゆっくりと歩きながらも、一人何かを呟きながら歩いている。 白いフリルがついた赤のセミロングスカートをはためかせ、爆発の中心部へ向かって一歩一歩確実に近づいていく。 右手には先程の爆発を起こした原因である白い紙と同じものを三枚、しっかりと握り締めていた。 もしもあの爆発を見ていた者がいたら、きっと気づく者は気づいていたに違いない。 あの爆発を起こしたのは、もしかすると゛彼女゛かもしれないと。 生憎この場に居合わせているのは゛少女゛と゛彼女゛の二人だけであったが、それは間違っていない。 あの紙を゛少女゛に投げつけ、爆発させたのは゛彼女゛の仕業だった。 「だからって、来ただけで散々人を驚かせるなんて…ちょっと趣味にしては悪質よねぇ?」 尚も濃厚な土煙が漂う爆発の中心部の前で足を止めた゛彼女゛は、まだ呟いている。 もしもこの独り言が他人に聞かれたとしても、きっとその言葉に含まれている事実を知ることは出来ないだろう。 立ち止まった゛彼女゛はその場でジッと土煙を睨み、その中にいるであろう゛何か゛を見据えようとしている。 中心地に何がい今はどういう状況になっているのかという事も知らなかったが、゛彼女゛は感じていた。 わざわざ自分を街の中央から、こんな人気のない場所へと導いたであろう傍迷惑な゛存在゛の気配を。 「メイジとかキメラといい――――…そしてアンタといい。本当、この世界は面白くて厄介だわ」 独り言をつづけながらも、゛彼女゛はジッと睨み続けている。 初夏の風に吹かれて少しずつ薄れていく土煙の中から見える、黒い人型のシルエットを。 奇妙な事に、そのシルエットの正体が突き出したままであろう左手がボンヤリと薄く光っている。 煙越しに見ているせいかもしれないが、まるで空中に浮かぶ火の玉のようだ。 「さてと、痛い目にあわして色々と聞きたい前に一つだけ質問するけど…」 ゛彼女゛がそう言った時、段々と薄くなっていく土煙の中からゆっくりと゛少女゛が歩いてきた。 左手を突き出した姿勢のまま、突如攻撃をしてきた゛彼女゛と同じ歩調で足を前に進めて迫ってくる。 段々とその姿がハッキリと見え始めた時、゛彼女゛は静かに身構えた。 まるで飢えた猛虎と対面した獅子のように、いつでも先手を打てるよう左手を懐に伸ばす。 その直後。爆風の中からようやく出てきた゛少女゛が、目の前にいる゛彼女゛と対峙するかのようにその場で足を止めた。 爆発でその身に羽織っていたローブが破け去った今、゛少女゛の着ている服が明らかとなった。 紅白を基調とした服に黄色のスカーフ。そして服とは別々になっている白い袖。 赤いセミロングのスカートには白いフリルがついており、土煙の所為で少しばかり汚れている。 足に履いているのはローファーではなくブーツであったが、それ以外は゛彼女゛と全く同じ容姿をしていた。 そう、全く同じ容姿をしていたのだ。瓜二つや双子という言葉では例えられない程に。 顔の形や肌と目の色も全て、型を取って量産された安い置物のように二人の姿は九割方一致している。 違っている点は履いている靴とその顔に浮かべた表情、そして体から滲み出ている゛怒り゛であった。 ゛彼女゛の体からは、段々と熱くなっていくお湯の如く怒りに満ちていく気配と癇癪玉の如き不機嫌さが募った表情。 ゛少女゛の体からは、心の芯まで冷えてしまうような氷の如く冷静な怒りの気配と人形の様な無表情。 だが…それ等を別にして何より目立っていた共通項は、双方ともに光り輝く゛左手゛であった。 先制攻撃を仕掛けてきた゛彼女゛の左手にはルーンが刻まれており、それを中心にして薄く輝いている。 一方の゛少女゛の左手には何も刻まれていないものの、夜中の墓地を彷徨う幽霊の様にボンヤリと光っている。 人気失せて久しい森林公園の中。 そこに今、殆ど同じ容姿をした二人の少女が対面している。 見れば誰もが困惑するであろう。段々と現実から離れてゆくその光景に。 「アンタ、一体何なのよ?」 ゛彼女゛―――博麗霊夢の口から出た唐突な質問に、 「…それは、こっちが聞きたいくらいよ」 ゛少女゛――…博麗霊夢は手短に返した後。戦いが始まった。 方向性はそれぞれ違うものの、二人の心が゛怒り゛のそれへと染まりきった状況の中、 全く同じ姿と声を持ち、互いに左手が光っている二人の霊夢の戦いが、今まさに始まろうとしていた。 前ページ次ページルイズと無重力巫女さん